日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

内田樹

◎コロナ禍と社会的共通資本(宇沢弘文『社会的共通資本』から)

〇5月2日放送の「BS1スペシャル 欲望の資本主義 特別編「コロナ2度目の春 霧の中のK字回復」の中で、宇沢弘文『社会的共通資本』の理論が大事であるという論者が何人かいた。 現在、新型コロナ感染症で世界の人々の生活が大きく変化し、金融危機以降に広が…

◎とほほ主義と知性(内田樹『ためらいの倫理学』から)

〇内田樹の論考は好きで、それは述べていることが適切であるかどうかというより、他の人が言いそうもないことを、独自の見方で展開していて、なる程そうだよねという言葉がいたるところにある。そして、その文体の流れが大層面白い。 著名になる前の本書の論…

◎非常時の心構え(コロナ禍の状況の中で)

〇自由な行動と豊かな暮らし この時期は行楽に各地に出かけていたが、昨年2月から一年以上、行動範囲はせいぜい居宅から1時間程度で神戸市からは出ていない。 居宅はどちらかというと都会地にあるが、近くに自然豊かな大小の公園もあり、季節の草花や海沿い…

◎「イベルメクチン」と「新型コロナウイルス」のこと

〇最近、新型コロナウイルス感染症の治療や予防に「イベルメクチン」の有効性が一部で話題になっている。懇意にしている友人も大層な期待を寄せている。 その期待のかけ方がどうかなと思ったので、そこでいろいろ調べてみた。 イベルメクチンについては2015…

◎孫の成長記録(姉2歳2ヶ月、弟4ヶ月)コミュニケーションの基本。

※〈教育やケア(子育てや介助・介護)は、その相手である一人ひとりの思いに濃やかに耳を傾けることからはじまり、また相手がいつの日かみずからの足で立つ、みずからをたてなおすのをじっと待つ、ということがとくに大きな意味をもついとなみである。〉(鷲…

◎『みんなの介護』の「内田樹『賢人論・第90回』」

※インタネットでよく参照するサイトに『最新の社会保障・介護関連のニュースを配信している「みんなの介護』がある。 その中の「賢人論」も時折読んで、いろいろ参考にしている。 案内によると《「賢人論」は、「みんなの介護」がお送りする特別インタビュー…

◎広々した時間意識で(内田樹『サル化する世界』より)

〇本書は「今さえよければ自分さえよければ、それでいい」―サル化が急速に進む社会でどう生きるか? との内容で、ポピュリズム、敗戦の否認、嫌韓ブーム、AI時代の教育、高齢者問題、人口減少社会、貧困、など、講演や論考をまとめたものとなっている。いく…

◎「自立主義的生活規範」と「自律」について。

〇「自律」は、自分の考え、行為を主体的に選択すること。それに対して、「自立」は他に依存しないで、自分の力で判断したり身を立てたりすること。 ちなみに、広辞苑では次のようになっている。 【自立】:他の援助や支配を受けず、自分の力で判断したり身…

◎「働く」ことの本質は「贈与すること」(内田樹の「働くとはどういうことか」から)

〇最近再燃してきたベーシックインカム(BI)論から、「働く」について考えてみる。 ベーシックインカム(BI)とは、「すべての個人が、無条件で、生活に必要な所得への権利を持つ」という考え方で、「働くこと(生きること)」と「生きるために必要な所得(…

◎「昭和」「平成」から「令和」へ

〇新年号が「令和」となり、5月から実施されることになる。 『万葉集』巻五、梅花の歌三十二首の序文「時、初春の令月(れいげつ)にして、氣淑(よ)く風和(やわら)ぎ、梅は鏡前(きょうぜん)の粉を披(ひら)き、蘭は珮後(はいご)の香を薫(かをら)す」が典拠だ…

◎マルクスの自分中心的な人間観から「地動説」的な人間観への転換(内田樹『寝ながら学べる構造主義』から)②

わたしは知識としては地動説を知っているが、感覚としては,日が昇り・日が沈むといい、自然界の動きなどについてはほとんど、自己を軸にした天動説な見方をしていることが多い。これはものの見方、思考方式そのものが、少なからず天動説的な感覚を持って暮…

◎私たちは「偏見の時代」を生きている(内田樹『寝ながら学べる構造主義』から)①

〇本書のまえがきで次のように述べる。 〈知性がみずからに科すいちばん大切な仕事は、実は「答えを出すこと」ではなく、「重要な問いの下にアンダーラインを引くこと」なのです。 知的探求は(それが本質的なものであろうとするならば)、つねに「私は何を…

◎「あなたなしでは生きてゆけない」(内田樹『ひとりでは生きられないのも芸のうち』より)

〇内田樹『ひとりでは生きられないのも芸のうち』を読んだ。何回も同じ本を読むことはあまりないが、この人の著作は読み返すことが多い。この本に所収されている、Ⅵ「死と愛をめぐる考察」―「あなたなしでは生きてゆけない」に促されるものがあり、自分に引…

◎「ありがとう」で成り立つ社会へ

孫の誕生後、ひとは生まれから、おこってくる欲求などに、一方的に周りの人に受けとめられ、応えてもらうことで生きていけるのだなと思う。 少し考えれば、先人がつくり上げたものを当たり前のように享受し、ほとんどのことを他の人に支えられたりやってもら…

◎他者とは「時間差を伴った私」であるという想像力

〇最近、息子が技術を生かして独立することになり、新たな事業場を借りて着々と準備を進めている。その事業場はかなり汚れていて、それなりに清潔にするために、日曜ごとに私たち夫婦が出かけて一緒に掃除、磨きなどしている。家族なら当然のような気もする…

◎「相互扶助的共同体」が成り立つ気風

※先回の投稿「先行世代から後続世代」に若い友人K君から次のようなコメントがあった。 「パプアニューギニアを見ていると、オーストラリア中国日本などを追い掛けているようです。日本のようにならなくたっていいのだよ、なってはいけないって、よく思うので…

◎先行世代から後続世代へ(内田樹『ローカリズム宣言』から)

※ここのところ身近な人が亡くなり、一方新たないのちが誕生している。そこで、改めて自分の立つ位置を考えてみる。 最近ともすれば自己の衰えに目がいきがちになるが、そのことよりも、人生リレーの一員として、世話を受けてきた先行世代からバトンを受け、…

◎人の「弱さ」に焦点をあてることで見えるもの

〇人は根本的に”弱い“生き物 NHKスペシャル「人類誕生」第 1 集「こうしてヒトが生まれた」は、次のように構成されていた。 霊長類から人類誕生の過程で、二足歩行‐道具の発明‐脳の発達、と身体の進化に相伴って、最近の研究成果から、家族の形成・一夫一妻…