日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

2018-01-01から1年間の記事一覧

◎子どもたちが育つあたたかい社会へ

〇先日Facebookに「子どもの育ちを描いたドキュメンタリー映画から」を紹介した。 映画は、「子どもの貧困問題」がクローズアップされている社会の現状をまずは知り、社会問題として考え、今、生きづらさを感じている子どもも大人も、誰もが幸せに暮らせる社…

◎「隣(とな)る人」に育まれて(子どもの育ちを描いた映画から)

※「いのちとくらしの映画祭with湯浅誠」に参加する。生きづらい社会の中で困難を抱える子どもたちをめぐる二本のドキュメンタリー映画の上映と社会活動家・湯浅誠さんによる講演。 湯浅氏の講演は「子どもの貧困から考える」との内容で、日本では七人に一人…

◎「虚構」を軸に(ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』を読んで)

国家、家族制度、法律、貨幣、宗教、〇〇主義など、すべて人間が作り出した虚構(フィクション・物語)、つまり存在しないものを信じる能力・想像力によって、他の生物種には見られないほど大規模な社会的協力が可能になり、一方、大がかりな紛争や戦争に発…

◎「ありがとう」で成り立つ社会へ

孫の誕生後、ひとは生まれから、おこってくる欲求などに、一方的に周りの人に受けとめられ、応えてもらうことで生きていけるのだなと思う。 少し考えれば、先人がつくり上げたものを当たり前のように享受し、ほとんどのことを他の人に支えられたりやってもら…

◎サザンオールスターズが好きだ

最近音楽番組はほとんど見ないが、サザンオールスターズは好きで、注目している。 サザンオールスターズ・桑田佳祐の、12月2日に開催されたパシフィコ横浜でのコンサート「平成三十年度!第三回ひとり紅白歌合戦」を紹介した記事があった。 エイズ啓発活動「…

◎孫の成長記録(1~2か月)「生物的な親」から「受けとめ手としての親」へ

〇 出産後、自分の体のことで娘が病院に行くことになり、孫はわたしたちの居室で過ごすことになった。誕生後40日ほどで、母親から離れて別の部屋での初めての体験である。 孫にとっては、未だ母というより受けとめ手として、お腹がすく、あるいは何か不快な…

◎他者とは「時間差を伴った私」であるという想像力

〇最近、息子が技術を生かして独立することになり、新たな事業場を借りて着々と準備を進めている。その事業場はかなり汚れていて、それなりに清潔にするために、日曜ごとに私たち夫婦が出かけて一緒に掃除、磨きなどしている。家族なら当然のような気もする…

◎乳幼児の知覚発達から「心の世界」へ

娘の出産後、妻は3週間ほど家事支援に入る。乳児の風呂入れをするたびに、その子の身体が逞しくなっていくのを感じるそうだ。左手で頭を支え、右手で体を洗うのだが、日に日にどっしり感が伝わり、ときおり足をける動作もあり、出産時2800余の体重の増加が50…

◎「いのち受け吾子は花野をかけめぐる」

娘の妊娠中に、生まれてくる子の名前をどうしようかと話題になったことがある。10月出産予定なので、女の子だったら俳句で秋の季語となっている「花野」で〈かの〉とよんではどうだろうかと言ったところ、娘も気にいったようで、そのように名付けた。 「花野…

◎「相互扶助的共同体」が成り立つ気風

※先回の投稿「先行世代から後続世代」に若い友人K君から次のようなコメントがあった。 「パプアニューギニアを見ていると、オーストラリア中国日本などを追い掛けているようです。日本のようにならなくたっていいのだよ、なってはいけないって、よく思うので…

◎先行世代から後続世代へ(内田樹『ローカリズム宣言』から)

※ここのところ身近な人が亡くなり、一方新たないのちが誕生している。そこで、改めて自分の立つ位置を考えてみる。 最近ともすれば自己の衰えに目がいきがちになるが、そのことよりも、人生リレーの一員として、世話を受けてきた先行世代からバトンを受け、…

◎乳幼児期の心の世界とは(鈴木秀男著『幼時体験』から)

※旧友F氏が、ご自分が深く関わった体験からこの著に触れているブログ記録が印象に残っていて、この機会に著書を取り寄せて読んでみた。 〇鈴木氏は内科医として、人間の病気の成り立ちについて、乳幼児期の生活がきわめて重要な意味を持っていると、どうし…

◎孫の誕生。娘の出産について(ひこ生えの記)

※先月、小さいころ家族の一員としてなにかと面倒をみてもらってきた叔母(享年94歳)が亡くなった。ほどなく娘の出産があり、ひとが生まれてやがて死んでいくことについていろいろ思うことが続いている。 〇孫の誕生経過 ・10月19日:昼頃に娘の陣痛が始ま…

◎人の「弱さ」に焦点をあてることで見えるもの

〇人は根本的に”弱い“生き物 NHKスペシャル「人類誕生」第 1 集「こうしてヒトが生まれた」は、次のように構成されていた。 霊長類から人類誕生の過程で、二足歩行‐道具の発明‐脳の発達、と身体の進化に相伴って、最近の研究成果から、家族の形成・一夫一妻…

◎高齢社会に思うこと(エリック・ホッファーの「人間の条件について」からの考察)

※改訂再録 〇病弱者や障害者、老齢者に対する思いやりがなければ、文化も文明も存在しなかっただろう。 先日老年学会から「高齢者の定義を75歳以上に」という提言があった。老齢意識は人それぞれであり、目安として健康寿命があり、統計では男女いずれも70歳…

◎前未来形で自分の過去を回想する(改訂再録)

〇みなで支え合いながら、よりよく生きていこうよ ​ 多くの人にとって、過去のつらい出来事や思い出話を語るとき、「過去におきた事実」をありのままに語ることはできないだろうと思っている。意識的か無意識的であるかは、人によって違いはあると思うが、現…

◎「人間の人間たるゆえんは家族にあると考えている。」(山極寿一)

〇ダーウィンの進化理論以後、そもそも霊長類からヒトはいかにして生まれたかの根本問題に光が当たるようになり、戦後日本において霊長類学が再興されたことなどにより、様々のことが解明されてきた。 その研究成果から、700万年の間に、霊長類から人類誕…

◎共同体は一つの大家族ともいえないか(福井正之『追わずとも牛は往く』から)

〇『追わずとも牛は往く』は、著者の40年ほど前の「北海道試験場」(「北試」―ヤマギシ会)の体験をふまえ、書き進められた。記録文学である。 この作品では、「北試」の体験をもとにした物語上の村『睦みの里』での、厳しいが豊かな自然・大地の中で、追わ…

◎福井正之『追わずとも牛は往く』-労働義務のない村でー書評

〇本書は、著者の40年ほど前の1976年から2年程の「北海道試験場」(「北試」―ヤマギシ会)の体験をふまえ、書き進められた記録文学である。 読むに従って、共同体とは何か? 労働とは? 人と人との生身の人間としての心の交流とは? など、ともに考えていく…

◎映画「種をまく人」を観る

〇友人の紹介で大阪アジアン映画祭、映画「種をまく人」を観る。 「種をまく人」は 監督・脚本・編集:竹内洋介、撮影監督・主演:岸建太朗で、この映画祭が日本での初上映となる。 ▼第57回テッサロニキ国際映画祭にて、最優秀監督賞と最優秀主演女優賞を…

◎社会的な生きづらさを抱えて(発達障害の当事者の話から)

※2015年4月に書いたものを改訂して再録。 〇発達障害の当事者が自らの障害を語る講演会が松江市であった。発達障害は、親のしつけや教育の問題ではなく、先天的な脳機能の障害とされる。自閉症、アスペルガー症候群、注意欠如・多動性障害(ADHD)、学習障害、…

◎逆転の発想 「浦河べてるの家」の地域活動から

〇精神障害の分野で、著名でよく紹介される活動に「浦河べてるの家」の地域活動がある。 ウィキペディア (Wikipedia)によると、「1984年に設立された北海道浦河町にある精神障害等をかかえた当事者の地域活動拠点で、社会福祉法人浦河べてるの家、有限会社…

◎働く幸せとは(2)(大山泰弘と障がい者)

〇福祉分野の根幹をなす理念に「ノーマライゼーション」がある。 ノーマライゼーションとは,障害者(広くは社会的マイノリティも含む)が一般市民と同様の普通(ノーマル)の生活・権利などが保障されるように環境整備を目指す理念で、逆にいえば,このよう…

◎働く幸せとは(1)(大山泰弘と日本理化学工業に触れて)

〇ある人との出会いや体験から、その後のその人の生き方を決定づけることがある。 そのことから、ある「理想」を描き続けることもあるだろう。 だが、ときの経過とともに、理想と現実のはざまで、描いた理想が薄れていき、あるいはおかしなものに歪んでいく…

◎オートファジーとファスティング

〇近年、ファスティングのように一定期間断食を行うことで、細胞内でオートファジーが活性化していることに、その関連の専門家、実際家の間では注目されている。 水島昇『細胞が自分を食べる オートファジーの謎』を参照しながらまとめてみる。 ▼細胞とタン…

◎自己とは何か(多田 富雄『多田富雄コレクション1』から)

※『多田富雄コレクション1、1免疫という視座―「自己」と「非自己」をめぐって』を学びほぐしながら読む。 ・「免疫とは何か」 人類は、生存を脅かす伝染病の流行に何度も曝させながらも、何万年もの歴史を生き延びてきた。それは私たちの体に、病原微生物…

◎2018年 年頭にあたって

〇質のよい生活に向けて 渡辺京二『さらば、政治よ』の「質のよい生活」について、次の三つの要点に絞って簡潔に述べている。 暮らしている街なり村なりの景観が美しく親和的であること。は 情愛を通わすことのできる仲間がいること。 人は生きている間、で…