日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

2016-01-01から1年間の記事一覧

◎2016年を振り返って

(12月29日) 今年7月に起こった相模原市の障害者施設殺傷事件は、障害者へのヘイトクライム(差別・憎悪の犯罪)だとの見方が広がっている。ほとんどの事件はその特異性とともに社会状況が反映しているが、とりわけ大きな社会的問題を孕んでいると思ってい…

◎重松清『赤ヘル1975』と戦争・原爆の語り継ぎ

〇重松清『赤ヘル1975』を読む 大のカープファンで、リーグ優勝が現実のものになりはじめてからソワソワする日が続いて、優勝が決まって取りあえずホットしている。 小学生の頃、父に連れられて試合をみに後楽園、駒沢、神宮などによく行っていた。父は今の…

◎「いるだけでいい」と言い切れる〈ひと〉に

〇相模原・障害者施設殺傷事件に触れて それを知人から知らされたとき、「なんて酷いことをするのだ」というような思いが出てくる。その後のニュースや知人の話から、犯人の「重度の知的障害者や重複障害者は1人で生きることができず、税金で養ってもらって…

◎石原吉郎に関する各種論考から

〇「私は告発しない、ただ自分の〈位置〉に立つ。」 最近、ある関心から石原吉郎関連の本を読むことが多い。その中で、石原の信念ともいえる「〈告発の姿勢〉や〈被害者意識〉からの離脱、断念」に、思うことがある。 折々、私は実顕地のことについて書いて…

◎〈体験〉そのものの体験(石原吉郎のエッセイなどから)

〇体験から追体験をへて身についた経験へ 最近、コミックエッセイ『カルトの村で生まれました』や、そのことも含めてその時期の実顕地のことについて、知人や元学園生、家族などと話し合ったり、自分のことをふりかえったりする。 また、これまでも人の体験…

◎一人ひとりの〈生〉に寄り添って(石原吉郎の論考などから)

〇私的体験と計量的発想法 先日、交流している福島の友人Sさんと話す機会があった。東日本大震災のことに話が及ぶ。 復興についてはまだまだなこともあるが、そうじて現象的には落ち着いてきているのではないかと仰っていた、 Sさん一家は大震災のただ中に…

◎信念と態度について

〇昨日(17日)は誕生日で69歳になる。その日は、マスコミでは舛添東京都知事の辞職とイチロー選手の安打記録の話題が盛んだった。そのことに関連して〈信念と態度〉のことを考えた。 ここでいう〈信念〉とは、意識的・無意識的にかかわらず、ある考え方を「…

◎平気で生きて居るとは

〇先日、懇意にしている知人から次のようなお便りをいただいた。 「105日ぶりにようやく昨日退院することができました。といっても無罪放免ではなく、仮釈放にすぎませんが。医者の話によれば、せいぜいあと2年というところらしいです。まあ、84年も生…

◎再帰的な性質「リカージョン」について

〇人間の脳を特徴づけている再帰的な性質「リカージョン」について、池谷裕二論を参照しながらあげてみる。 「言語の構造の一つの特徴は、リカージョン、つまり「再帰」にある。—-再帰とは、「タロウ君は、ジロウ君が、ハナコちゃんがお人形遊びをするの、を…

◎「間違い主義」と「アブダクション」について(2)

〇何か考えていくときの方法として、帰納法、演繹法と並ぶ第三の推論法として、アブダクションがある。最新の科学成果を駆使して、具体的に語ってくれる池谷裕二に面白さを感じている。。 アブダクションとは、 起こった現象を最もうまく説明できる仮説を形…

◎「間違い主義」と「アブダクション」について(1)

〇このところ、「自分にたてこもらない(他者体験)」ということを考えている。最近、まど・みちおの戦争協力詩についての一連の報道に触れていくと、「間違い主義」のことにつながっていった。 それについて、鶴見俊輔は、次のように度々取り上げている。メ…

◎糖尿病と人類の食生活の歴史について 

〇糖尿病と糖質制限食について 昨日、芦屋市のY内科クリニックに行き、検査・診察を受けた。高血糖で15年ほど前から服薬を続けているので、移住後いろいろ調べて、糖尿病に関して相談できそうなところを探し、診察を受けている。 昨年の9月半ばから、糖尿病…

◎自我意識にたてこもらない他者体験 

〇異質な他者と 25日のブログで、「エマニュエル・レヴィナスは,自我意識にたてこもらない他者体験を,『他者の顔』と表現した。そして,「顔を前にして応答する」ことは「顔に対して責任を負う」ことであるとして,リスポンシビリティ(応答可能性=責任)…

◎杉原千畝からエマニュエル・レヴィナスへ

〇「顔を前にして応答する」ことは「顔に対して責任を負う」こと。 知人のブログやFacebookの投稿を読んで、触発されることがよくある。最近映画化にもなって話題になっている杉原千畝について、知人KさんやFさんの投稿記事で、映画の感想も含めて様々な角度…

◎岩崎航エッセイ集『日付の大きいカレンダー』を読んで

〇生きる(生き抜く)ことへの信頼感を培う・「僕にはもう夢も希望もないよ」(エッセイより)茫然と無感動な日々に流されていた頃、ぽつりと母に言ったことがあります。たんなる恨み言や愚痴というよりも、ごまかしようのない命の奥底からもれた呻きだった…