○『心なごみませ』から
おんな組いのち―連載コラム(https://onnagumi.jp/home.html)に、山元加津子さんは『心なごみませ』を連載している。(※現在休止中)。
『心なごみませ』には養護学校時代のさまざまな子どもたちとの触れ合いが、よく語られている。
原田大助(大ちゃん)との触れ合いも何度か出てくる。そこから見ていく。
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山元加津子『心なごみませ 第19回』
・「あるということ」
その日、大ちゃんと私は「ある」ということについてずいぶん話をしました。
「ある」ということがどういうことかについて始まったのは星のことを話していたときからでした。
星の光が 見える
星と 僕は 知らないもの同志やけど
僕の心を 動かす力を 持ってるんやな
星はそこでひとり光っています。地球に住んでる人間の誰とも関わりなしにそこに光っています。私たちもお星さまとぜんぜん関係なしに、それぞれが生きているけれど、大ちゃんはお星さまを見て、心が動いたのが不思議と言いました。ああ、本当だ、お星様は何万光年もの遠くにいるのに、私たちはお星さまにお願いをしたり、元気をもらったり、勇気をもらったり・・・お星さまはなんとたくさんの気持ちを私たちにおこしてくれているのでしょうか。
大ちゃんはそれから「ある」ということについて考えたのだと思います。
葉っぱだって 石ころだって
そこにあるだけで
心を動かす力がある
それが“ある”ということなんかな
お星さまだけじゃなくて、大ちゃんは葉っぱだって、石ころだって、それからきっと風だって、光だって、なんだって心を動かす力があると驚いています。みんな自分に関係なく生きているみたいなのに、みんな大ちゃんの心を動かす力があると大ちゃんはびっくりしたみたいです。そして、急に気がついたように言いました。「それが“ある”ということなんかな」
それから大ちゃんは人についても考えました。
僕だってそこに“ある”
“ある”ものはみんな大切なんや
私だって“ある”なのですね。みんなみんな“ある”なんだ、“ある”ってことは大切だっていう証拠なんだ、そしてみんなみんな“ある”だからとっても大切って思ったら、私、うれしくてうれしくてしかたがないです。
大ちゃんが昔作った詩です。
僕が生まれたのには理由がある
生まれるってことにはみんな理由があるんや
僕は僕やから
大切にできる
僕は僕やから
がんばれる
僕は僕やから
好きになれる
自然だって、人間だって、みんなひとりひとり勝手にいきているようなのに、みんな関わりあっていて、どれもが大切ってわかったら、私も自分のことを大切にしたいなあと思いました。自分は自分でいいんだ、自分だからこそ大切なんだってまた考えられてうれしいです。
この章の詩は第四詩画集『土の中には 見えないけれど いつもいっぱい種がある』に掲載。この著出版当時、父の仕事の関係で徳島に暮らしている。
なお、「心なごみませ 第48回」では大ちゃんの戦争の詩も紹介している。
・「戦争の詩」
「戦争は 手と足じゃたりなくて 心まで 持っていくんやな 大好きと思ったり いっしょにいたいと思ったり 心は大事なものやのに みんな持っていくんやな」
「悲しくつらい気持ちです 人が人を殺して それが正しいことなんて いったい誰が思うんやろ」
「殺されるために 生まれてこない 殺すためにも 生まれてこない 戦争は大事なことを 忘れている」
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※原田大助 詩/山元加津子 文『土の中には見えないけれど いつもいっぱい種がある〜原田大助詩集〜』(金の星社、2001)
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