日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

◎糖尿病と人類の食生活の歴史について 

〇糖尿病と糖質制限食について

 昨日、芦屋市のY内科クリニックに行き、検査・診察を受けた。高血糖で15年ほど前から服薬を続けているので、移住後いろいろ調べて、糖尿病に関して相談できそうなところを探し、診察を受けている。

 昨年の9月半ばから、糖尿病の服薬をやめている。その経緯については、2015年10月4日のブログで取りあげた。

 その内容は、15年程前から医者の勧めにより服薬することになり、糖尿病は運動、食事のほか、服薬を続けることが大事であるといわれていて、当たり前のように、まじめに服薬し続けていた。それに対して、身体の研究をしているM氏は、「薬で糖尿病が治ることは、聞いたこともないし、あり得ないことで、むしろ飲み続けることで、それがないといけない体になってしまうし、抑制効果も薄まっていき数値に頼っていると、医者からはより強いものを勧められることになる。」という話で、随分と納得したので、ある種のためらいを覚えつつ、思い切って薬をやめてみることにした。

 

 高齢化社会を迎えて、自分自身の身近な課題として、「老い」の捉え方について考えていて、その中での健康概念、特に老齢化に伴っての病気や極度の衰弱が大きな課題となること。そのための、自分を実験材料としながら、見ていくのも面白いのではないかと思った。それと、一生薬と付き合うのは叶わないという気持ちもあった。

 服薬を一切やめて2週間後に、相談できそうな内科クリニックを見つけたので、そこに行って血糖値を測定したところ、以前と全く変わらない数値が出た。

 経過を聞いた専門医から、「薬なしでやってみましょう、そのために糖質制限食をしてみてください」と言われ、紹介してくれた江部康二監修『糖質制限の教科書』を取り寄せ、いろいろと調べ続けた。

 要旨は、カロリーや脂肪を制限することなく「糖質を制限した食事を摂る」ことが基本、肉や魚などのたんぱく質はしっかり食べて、適量ならば蒸留酒などOKとある。

 根拠もある程度しっかりしているように感じたし、無理がなく楽しくやれそうに思い、ゆるやかなプチ糖質制限食を続けている。

 普段の食事内容は、朝と昼は全粒粉パン、茹卵、ハム、チーズ、生野菜、豆乳、珈琲など。夜は焼酎の湯割と肉、魚、豆腐、煮物、酢の物などで、糖質はとらないようにしている。ときには、ご飯、うどん、パスタ、鮨、餅などを食べている。これから玄米食を取り入れていこうと思っている。それと、移住後に変化したこととして、車や交通機関の使用は最低限にして、できるだけ歩くように意識している。

 そこで測定器も斡旋してもらい、ときどき計り、記録・データーをとっていて、この食事では血糖値はこのようになるなど、何かと面白い。

 この間3回の検査で、最近1~2か月の平均値であるHbA1c(ヘモグロビン・エイワンシー)が、6.6%から6.2%まで下がってきている(基準値4.6~6.2)。専門医もこれで続けましょうという。

 15年ほど、薬を飲み続けてきて、カロリーを気にしていたのは何だったのだろうと思っている。

 

 最近では「糖質制限食」について紹介する情報も出てきているが、服薬やカロリー制限を言い続けている医療機関と、そのほうからの情報が圧倒的に多い。

 勿論、高血糖の高値を放置することによる弊害も多くあり、糖質制限食による経過も見ていく必要はあるが、もっと、いろいろな角度から考えなおしていくことが大事だなと思っている。

 

 いろいろな資料を検討して、私がとても面白いと感じた根拠は次のことである。

 人類の歴史が大雑把に400万年?  ぐらいとして、その中で、もっとも切実な課題は食糧の確保であった。それを優先課題、中心的な営みとして、集団、社会が形成されてきた。

 農耕が始まったのは、およそ1万年前。その前の399万年間?  は狩猟や採取の時代であり、特に食物の安全な確保のために力を合わせてきた。その長い歴史のもとに農耕が始まった。

 農耕が始まったのが約1万年前で、世界に定着したのが約4000年前である。さらに18世紀に欧米で小麦の精製技術が発明され、白いパンが登場した。日本では江戸中期に白米の習慣が定着した。そしてここ200年~300年間、世界中で精製された炭水化物が日常的に摂取されるようになった。精製された炭水化物は未精製のものに比して、さらに急峻に血糖値を上昇させることが分かってきた。

 人類の食生活は「農耕が始まる前」「農耕以後」「精製炭水化物以後」の3つに分けることができ、この3段階の変化が人体の代謝において極めて重要な意味をもってきたのではないだろうか。

 人体にはホメオスタシス(恒常性)というものがあり、できるだけ変化が少なく体内を一定の状態に保とうとする。血糖値に関しても、上昇すればこれを下げようと、インスリンをはじめ様々なホルモンが分泌されて体内の代謝バランスに乱れが生じる。その乱れが人の健康に重大な影響を及ぼしているのが、様々な検証で明らかになってきている。

 狩猟採取時代の長い期間の中で、その生活形態に適応するように、ひとの身体の機能がつくられてきた。いかに少ない収穫で、しかもかなり不定期ななかで、みなが生き延びていくような能力、体の機能が形成されてきた。

 文明社会での極度に急速に変化してきた食生活のあり方に、それらに対応するような身体のシステムができないままに、現代社会の各種の生活習慣病、糖尿病の蔓延に現れているのではないだろうか。

※宮本輝・江部康二『我ら糖尿人、元気なのには理由がある』東洋経済新報社、2009などを参照)

 

 いくつか付け加えておく。

 人類の誕生について、現代人につながるホモ・サピエンスがいつ頃誕生したのかは、様々な見解があり、大きな幅がある。さらに、現代人につながるような身体のシステムがどのように出来てきたのかはどこまでも推測の域を出ない。ホモ・サピエンスの出現から作りあげてきたと考えるよりも、以前からのことを多く、継承していると思われる。私たちは、人であるまえに、生きものなのだから。

 したがって、人類の食生活は「農耕が始まる前」「農耕以後」「精製炭水化物以後」の3つに分けることができるとの見方は、そうではないかと思うが、江部康二などの歴史年表に関しての見解には疑問符をつけておく必要がある。

 それでも、種々の観点からの実証をふまえて、狩猟採集時代に、現代人につながる身体のシステムができてきたとの見解は面白いと思い、それに基づいて、私なりの仮説を展開した。

 懸念をいくつかあげてみる。糖質制限食が、今糖尿病で血糖値の高い人には有効であるとしても、それを続けていった場合どうなるのか。特に痩せすぎる場合には、体力、気力、免疫力の低下の原因ともなり、むしろ低血糖状態の方が恐いぐらいだ。

 それと、ご飯、ラーメン、そば、パスタなど大好きな人もいるだろうし、それを極度に我慢したり、数値に拘ったりすると、ストレスが増してくるし、毎日の暮らしが楽しくなくなる。

 いずれにしても、「糖質制限食」がクローズアップされてきつつあり、どのようなことにもメリットとデメリットがあり、食後よく動くように意識するとか、無理がないところで、各自が工夫しながら、身体の状態を確かめながら対応していくことが大事ではないだろうか。

 自分の身体を材料にしながら、今後の展開を慎重に見ていこうと思っている。

 

・参考としてウィキペディアの「人類の進化」をあげておく。

「ヒト属(ホモ属)はおよそ200万年前にアフリカでアウストラロピテクス属から別属として分化しヒトの属するホモ・サピエンスは40万から25万年前に現れた。またこれらの他にも、すでに絶滅したヒト属の種が幾つか確認されている。その中にはアジアに生息したホモ・エレクトゥスや、ヨーロッパに生息したホモ・ネアンデルターレンシスが含まれる。」「ホモ・サピエンスの進化と拡散については、アフリカ単一起源説と多地域進化説とが対立している。アフリカ単一起源説では、アフリカで「最も近いアフリカの共通祖先(RAO)」であるホモ・サピエンスが進化し、世界中に拡散してホモ・エレクトゥスとホモ・ネアンデルターレンシスに置き換わったとしている。多地域進化説を支持している科学者は世界中に分散した単一のヒト属、おそらくホモ・エレクトゥスが各地でそれぞれホモ・サピエンスに進化したと考えている。」