〇毎年8月になると、太平洋戦争や原爆関連の情報が多くなる。新たにさまざまな記録が見いだされて、報道記事や放送番組になる。その月に限らず、それに関心を寄せてきた。
そこに至った経過や、その後の検証や対処の仕方は、一部の識者が言うように、ときの強者によりかなりゆがめられ、隠蔽されてきた体質は、今もあまり変わっていないと思う。
だが、地道な各種調査によりさまざまなことが明らかになってきて、そこから現れる課題を引き受け、次代に繋げる役割があると、思っている。
毎年NHKは原爆や戦争関連の番組を放映する。
また過去の放送されたものもNHKスペシャルまとめ記事 - 全記事一覧やネットで検索して観ることができる。
どのようなものでも、編集担当者の見方・思惑があり、それに留意する必要があるが、大体において信頼できるもので、いろいろ考えさせられた番組を、個人的なブログなどで、わたしの見解を入れながら取りあげてきた。
6日にNHKスペシャル「原爆が奪った“未来” 〜中学生8千人・生と死の記録〜」とNHKスペシャル「原爆初動調査 隠された真実」が再放送された。
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〇NHKスペシャル「原爆が奪った“未来” 〜中学生8千人・生と死の記録〜」
77年前、原爆投下された8月6日8時15分に、広島の中心部には8000人の中学生が集まっていた。
問題となったのは誰が作業を担うかで、戦況の悪化に伴い人手不足が深刻化する中、10代の青年は次々と戦地に、中学2年生までは多くが軍需工場などでの勤労奉仕に駆り出されていた。そこで、軍の主導で、空襲による火災の被害を抑えるために、大半の中学1年生が木造家屋を取り壊す作業に動員されていた。
またその頃、原爆特有の症状が生き残った生徒たちを襲い始めた。放射線による「急性障害で、多くを死に至らしめた。
その後も様々な身体的な症状に見舞われることになる。
結局、原爆投下から1か月の間に8000人のうち、およそ6000人が命を落としていき、生き残った中学生や関係者は、戦後、「あの日の記憶」に苦しみ続けてきた。
今回、中学1年生の動員の内幕を記した資料が見つかり、原爆投下の1ヶ月前、軍や行政、学校関係者が集まり行われた会議の記録、死去された個人の日記や今なお健在な親族(大方90歳代)などの証言で番組は構成されていた。
番組を通してわたしが思ったのは、すべて「お国のため」との観念で、大方の国民が動いていて、年若い中学生などにも、強い影響を与えていたのではないか。
番組のエッセンスを5分の動画で見ることができる。また要旨がネットで紹介されている。
https://www.nhk.jp/p/special/ts/2NY2QQLPM3/blog/bl/pneAjJR3gn/bp/p14MBylDng/
〇NHKスペシャル「原爆初動調査 隠された真実」が再放送された。
今から77年前の終戦直後、広島と長崎では、アメリカを中心とした連合国による大規模な調査が行われていた。
その目的は、人類の上に初めて投下された原爆の被害とその“効果”を調べること。アメリカ軍に日米の科学者が協力する形で進められ、原爆の放射線の影響などが詳しく調べられた。
実は今、その調査に関して新たな事実が明らかになっている。
調査では、被爆地に残る放射線・残留放射線が計測され、科学者たちは「人体への影響」の可能性を指摘していた。
そして、爆心地から3キロ以上離れた地点で、自然界の100倍以上の放射線が計測されたにもかかわらず、アメリカ軍は「人体への影響は無視できる」と報告書に記載。
科学者たちが被爆地に残る「残留放射線」の影響を指摘していたが、アメリカ軍およびときの権力はそれを否定してその事実は隠蔽されることになった。
なぜ、そうしたことが起きたのか。番組では、埋もれていた報告書や証言を発掘。アメリカだけでなく、旧ソビエトが行った調査や報告書なども入手した。そこからは、米ソが核開発にまい進する中で、原爆の被害に向き合おうとしなかったことが分かってきた。
今も、広島や長崎の人々は、残留放射線の影響で苦しんでいると訴えている。原爆の影響に苦しむ人々にとって原点とも言える「初動調査」。その全貌に迫った番組だ。
番組のはじめに、「残留放射線がどの程度人間に影響を及ぼすかは興味深い」のような発言があり、一人ひとりの人間・被爆者に寄り添うよりも一つの実験材料として見ていくことのように覚えた。
人体にほとんど影響せずに、マンハッタン計画の有効性を世界に誇示するような隠蔽がなされていたことが様々な証言から明らかにされていく。
科学が政治に翻弄されていくことや、ときの権力(米国政府とアメリカの核開発推進者)による放射線・残留放射線計測の隠蔽が鮮明に浮き彫りされていた。
それに日本政府は後押ししていた。さまざまな分野で、その隠蔽体質は今も変わらないだろうと思う。