日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

◎「100の診療所より1本の用水路を」(中村哲)

〇入院中妻をとおして、親しくしている福島の友人からの報告を聞いた。

10月の19号台風により、浸水被害、泥水による家・家具などの惨状、壊れた建物など惨憺たる状況があちこちにあり、後片付けも遅々として進まず、日々いたたまらないそうである。聞いていても、何か重い感じになる。

入院して症状は気になるとはいえ、治療に専念できる環境にいることはありがたいと思うが、決して当たり前のことではないのだとも思う。

私の暮らし、病気といっても家族だけではなく社会状況と切り離すことはできないし、身近なことだけではなく、社会のことにも目を向け続けていくこともしながら、大ぶりな言い方になるが、未来の世代につながるものを考えていきたいと思っている。

-----------

12月4日、30年以上にわたり、アフガニスタンで復興支援に携わった中村哲さん(73)がお亡くなりました。灌漑工事の現場に赴く途中の車が何者かに銃撃されたそうです。

 7日にETV特集 追悼中村哲さん「武器ではなく 命の水を」が再放送されました。

NHKの番組紹介に番組スタッフからなどが記録されています。

https://www.nhk.or.jp/docudocu/program/20/2259690/

 

番組内容は〈今月4日、戦乱が続くアフガニスタンで干ばつと戦ってきた医師・中村哲さんが銃撃され亡くなった。「戦乱は武器や戦車では解決しない。農業復活こそがアフガン復興の礎だ」と白衣を脱ぎ、用水路建設に乗り出した中村医師。長年の努力の末、用水路は完成、大地に緑がよみがえり、人々の平穏な営みが再び始まろうとしている矢先だった。中村さんをしのび、その15年にわたる不屈の歩みを記録した2016年の番組を再放送〉

 

「番組スタッフから」にその経緯が紹介されていて、伝わってくるものがあり、あげておきます。

〈【番組の見どころは?】

長い戦乱状態にあるアフガニスタンで、戦火以上に人々を苦しめているのが「干ばつ」です。いまでも国民の3分の1の760万人が食料不足に苦しんでいると言われています。医師・中村哲さんは用水路を建設し、乾いた大地を農地に復活させようと奮闘しています。数々の苦難を乗り越え用水路に水が流れ始めると、奇跡のような光景が現れます。乾いた大地が広大な農地へと蘇り、人々の穏やかな暮らしが戻り始めます。武器や鉄砲でな無く水が取り戻した平和を見ていただければと思います。

【この番組を企画したきっかけは?】

私が初めて中村哲医師の取材をしたのが1998年、以来18年間、断続的に現地取材を続けてきました。干ばつの酷さ、用水路建設の困難、甦る緑の大地などを記録し続けてきました。911から15年目の今年、悲劇の記録ではなく希望の映像記録を残したいと思い企画をしました。

【心に残ったもの、あるいは心に残るものは?】

用水路建設は中村医師一人の力で行ったものではなく、アフガン農民の力がなければ出来ませんでした。彼らは用水路の建設を自分たちの村を再生させる活動だと信じ、雨の日も酷暑の日も中村医師と共に水路を掘り続けました。その姿には同じ人間として共感、尊敬できるものでした。巷間言われる怖いアフガン人のイメージは微塵もありません。

【見てくださる方に一言】

泥沼化するアフガン問題に対処するために国際社会は軍隊の派遣や様々な支援を行ってきました。しかし、アフガン和平はいまだ実現していません。そんな中、中村医師の用水路の水が小さな地域ですが、穏やか暮らしを取り戻しました。戦乱と干ばつの地に真の平和をもたらす物は何なのか、静かに問いかける15年の記録をご覧ください。

(日本電波ニュース社 プロデューサー&カメラマン 谷津賢二)〉

 

中村哲さんはその言動がよく取り上げられますが、ものごとの本質をつかみ、強固な信念のもと、旺盛な実行力と現場主義、気持ちの豊かさと楽天的な性格など、そのもとにある考え、態度に惹かれています。

この番組では、長期的に中村哲さんを撮り続けたひとならではの、〈用水路建設は中村医師一人の力で行ったものではなく、アフガン農民の力がなければ出来ませんでした。〉がアフガニスタンの風土とともによくとらえていました。

また、試行錯誤をする姿やアフガニスタンの村人と接する態度がよく現れているように思え、そこに多くの人が共鳴して事業はできたと思いました。

 

なおNHKN EWS WEB 12月5日に、「銃弾に倒れた中村哲医師が伝えたかったことは?」の画像と、中村哲医師の足跡「100の診療所より1本の用水路を」の文章が載っています。

https://www3.nhk.or.jp/news/html/20191205/k10012203051000.html