日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

◎樹々に過去・現在・未来をみる。

〇西本願寺の銀杏を見に行く。

西本願寺の御影堂門前の銀杏の木は、横に枝を広げるという特異な銀杏で、地上2、3メートルのところから水平方向や斜め上に向かって縦横に枝を張り巡らせる様子から逆さ銀杏と呼ばれている。

今年四月に訪れたときの枝ぶりから、秋にはどのような姿になっているのか見たいと思っていた。この間身体の異変があり、半年前には普通に歩いていたが、今回は緊張した気持ちで歩いていた。

半年の激変を思う一方、来てみてその見事さに見惚れていた。

この銀杏は、しばらくすると人間からみて見事な黄葉は散り、冬を越して次の年に備えるくりかえしで成長するのだろう。この銀杏は樹齢400年と言われている。

人は人生の冬を越えたら、個人の生としたらお仕舞いを迎えるが、次の世代に繋げるという役割があるような気がする。

願わくは、いいものを残し、変なものをなくしていきたいと思う。ささやかなことしかできないだろうが、その気概は持ち続けていたい。

f:id:hibihiko_ya:20191217221552j:plain

 

f:id:hibihiko_ya:20191217221716j:plain

〇京都府立植物園を散策。

西本願寺を後にして、妻ともどもお気に入りの京都府立植物園に行く。

京都府立植物園は、日本で最初の公立植物園として1924年1月1日に開園した。戦後しばらく閉園を余儀なくされたが、1961年4月に再開したという。

 

広大な敷地の園内はほとんど段差がなく、普通に歩くことさえ緊張する今の私にとってはありがたい場所になっている。

広々した空間に植わっている樹木や草花の名前や由来を読みながら、しばしば立ち止まりながら、ゆったり散策する。

 

館内案内によると、面積24ヘクタールの広大な敷地の園内には、日本の四季の花が見られる正面花壇や洋風庭園、熱帯植物を集めた温室、北半分は半木(なからぎ)の森と呼ばれる自然に近い森を利用した生態植物園のほか、桜林・くすのき並木・竹笹園・観覧温室などさまざまなエリアに分かれ、約12,000種類、約12万本の植物が植えられているという。

また、園内にはいろいろな樹々があり、この時期は紅葉、黄葉も落葉もあでやかで、ちょうど晩秋と初冬が入り混じり、ところどころに、ここならではの花や変わった植物があるのも面白い。

 

園芸にも造詣が深かった作家カレル・チャペックは、次のようにいう。

〈翌春に咲く花は密かに秋にその根を伸ばし、秋に咲く花は春には芽吹いているように、未来は既にこの現在の中にもあるんだろう。------われわれ園芸家は未来に生きているのだ。〉

この植物園は、過去・現在・未来が同じ空間に現れているような気がする。