日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

◎たまゆらの記⑳

〇「認知バイアス」について

9月28日に放送された『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)で、玉川徹氏は安倍晋三元首相の国葬の進行や菅義偉前首相の弔辞について「これ、電通が入ってますからね」とコメント。大手広告代理店の電通による「演出」だと断言したが、翌日の放送で「事実ではありませんでした」と全面謝罪した。

 

 朝食を食べながらよく見る番組で、そうかなと思うときも多いが、どちらかというとご自分の意見を遠慮なく堂々と言う姿勢を面白いなと見ていたので、アレレと思った。

 

 典型的な認知バイアスで、一部では注目されている番組と人物のこともあり、これはまずいと思った。

 

 認知バイアスとは、自分の思い込みや周囲の環境といった要因により、非合理的な判断をしてしまう心理現象だ。

 

 最近話題になっているウクライナ問題においてのプーチン大統領の発言などにも、それを感じる。

 

 わたしはある特殊な思想団体に長年所属していた。

 そこでは自分なりに考えたことも多かったと思うが、どこかに自分たちは特殊なことをしているというような根拠のない思い込みや認知バイアスがあったと思う。

 

 世の中で起こっていることに対して、どこまでも自分はそのように思っているが、本当のところは分からないことが多いのではと考えている。

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参照:東京大学薬学部教授の池谷裕二氏は、認知バイアスを「脳が効率よく働こうとした結果、副次的に生じてしまったバグ」だと説明している。

 

 池谷裕二氏は認知バイアスについてある雑誌で面白い見方を述べている。一部紹介する。

 

《認知バイアスは、そうとわかっていても、つい落とし穴にはまり、なかなか修正することができないクセです。だからこそ認知バイアスなのです。

 

 人は自分のクセに無自覚であるという事実に無自覚です。他人のクセには容易に気づくことができても、案外と、自分自身のクセに気づかないまま自信満々に生きているものです。最大の未知は自分自身です。

 

 本当の自分の姿に気づかないまま一生を終えるなんてもったいない──。せっかく人間に生まれてきたのですから、自分の認知バイアスについて知っておくのは、決して悪いことではありません。

 

 こうした考えが、私も40代の後半に入り、ますます強くなってきました。これに押され、ついに認知バイアスについての初心者向け解説書『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版』(講談社ブルーバックス)を上梓する運びになりました。この本は、心の盲点を知るための手引き、いわば「心の辞書」です。

 

「脳」はこんなにダマされている!池谷裕二『自分では気づかない、ココロの盲点 完全版』

 

 ただし注意してください。脳に偏見があること自体は罪ではありません。クセは脳のデフォルトです。そして偏見はときに生きることを楽にしてくれます。

 

 しかし、だからといって、その偏見は必ずしも礼賛されるとは限りません。もし全員が自分の「正しさ」を妄信したままコミュニケーションすると、不用意な摩擦が生じかねません。

 

 傾向と対策──。脳のクセを知っていれば、余計な衝突を避ける予防策になります。それだけではありません。脳を知れば知るほど、自分に対しても他人に対しても優しくなります。そして、人間って案外とかわいいなと思えてくるはずです。》(「本」2016年2月号より)