日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

◎疑問と好奇心(アインシュタイン・レイチェル・カーソンの言葉から)

○2歳半過ぎの孫の好奇心あふれた行動は微笑ましい。

 マンションの結構広い庭に、私はほとんど注意を払わないが、孫にとっては、ワンダーランドで、蟻やダンゴムシなど虫たちの動き、面白い石やへんてこなものをしばらく眺めていじりまわしている。

 これはどうなっているのだろうと、不思議で面白いらしい。

 

 レイチェル・カーソン著『センス・オブ・ワンダー』上遠恵子訳、森本二太郎写真(新潮社、1996)に次の言葉がある。

 

〈「子どもたちの世界は、いつも生き生きとして新鮮で美しく、驚きと感激にみちあふれています。残念なことに、わたしたちの多くは大人になるまえに澄みきった洞察力や、美しいもの、畏敬すべきものへの直感力をにぶらせ、あるときはまったく失ってしまいます。

 もしもわたしが、すべての子どもの成長を見守る善良な妖精に話しかける力をもっていたとしたら、世界中の子どもに、生涯消えることのない『センス・オブ・ワンダー=神秘さや不思議さに目を見はる感性』を授けてほしいとたのむでしょう。

 この感性は、やがて大人になるとやってくる倦怠と幻滅、わたしたちが自然という力の源泉から遠ざかること、つまらない人工的なものに夢中になることなどに対するかわらぬ解毒剤になるのです」(p23)〉

 

〈「「知る」ことは「感じる」ことの半分も重要ではないと固く信じています。

 子どもたちがであう事実のひとつひとつが、やがて知識や知恵を生みだす種子だとしたら、さまざまな情緒やゆたかな感受性は、この種子をはぐくむ肥沃な土壌です。幼い子ども時代は、この土壌を耕すときです。

 美しいものを美しいと感じる感覚、新しいものや未知なものにふれたときの感激、思いやり、憐れみ、賛嘆や愛情などのさまざまな形の感情がひとたびよびさまされると、次はその対象となるものについてもっとよく知りたいと思うようになります。そのようにして見つけだした知識は、しっかりと身につきます。

 消化する能力がまだそなわっていない子どもに、事実をうのみにさせるよりも、むしろ子どもが知りたがるような道を切りひらいてやることのほうがどんなにたいせつであるかわかりません。」(p24~26)〉

 

 孫をみていてもそう思うし、73歳の自分にとっても大事にしたいと考えている。

          ☆ 

 

 そして、アインシュタインにも子どもの感性を保ちながら、疑問と好奇心を持ち続けた人として、きらめくような言葉がある。

 

 アインシュタインの言葉、について、さまざまな書籍があり、インタネットで「アインシュタインの名言」と検索すると、英文の付いたものも検索できる。

 

 だが、ある文章にある一部文の言葉は、前後の文脈を見ていかないと、その真意がもう一つ分からないものである。

 

 そのため、出典の明示が欠かせないが、それをしていない「言葉」の紹介が多い。またその原文、少なくとも確かな翻訳者による独文から英文あるいは日本語文に翻訳したものであることが望ましい。

 

 アインシュタインも何かで触れていたと思われるが、「自身が述べた言葉には責任を負うが、翻訳したものには、責任を負えない」と。

 そのことを留意しつつ、私の関心に引き付けてみていく。

 

 

・「重要なことは、疑問を止めないことである。探究心(疑問)は、それ自身で存在の意味を持っている。永遠、生命、現実の驚くべき構造の、神秘に思いを馳せるなら、畏怖に打たれざるを得ない。日々この神秘さの一部でも思いを馳せるだけで十分である。気高き探究心を決して失うことの無いように。」

"The important thing is not to stop questioning. Curiosity has its own reason for existing. One cannot help but be in awe when he contemplates the mysteries of eternity, of life, of the marvelous structure of reality. It is enough if one tries merely to comprehend a little of this mystery every day. Never lose a holy curiosity."

 

・「学べば学ぶほど、自分がどれだけ無知であるか思い知らされる。自分の無知に気づけば気づくほど、より一層学びたくなる。」

”The more I learn, the more I realize I don’t know. The more I realize I don’t know, the more I want to learn.”

 

・「過去から学び、今日のために生き、未来に対して希望をもつ。大切なことは、何も疑問を持たない状態に陥らないことである。」

”Learn from yesterday, live for today, hope for tomorrow. The important thing is not to stop questioning.”

 

・「私には特別の才能はない。ただ私は、好奇心がとんでもなく旺盛なだけなんだ。」

“I have no special talent. I am only passionately curious.”

 

・大切なことは、何も疑問を持たない状態に陥らないことである。

〔1955年5月2日 ライフ誌のアインシュタインの言葉「若者への老人からのアドバイス:聖なる好奇心を失ってはならない」より〕

“The important thing is not to stop questioning.”

 

 

・「一度も失敗をしたことがない人は、何も新しいことに挑戦したことがない人である。」

“Anyone who has never made a mistake has never tried anything new.”

  

・「ある年齢を過ぎたら、読書は精神をクリエイティブな探求から遠ざける。本をたくさん読みすぎて、自分自身の脳を使っていない人は、怠惰な思考習慣に陥る。」

“Reading, after a certain age, diverts the mind too much from its creative pursuits. Any man who reads too much and uses his own brain too little falls into lazy habits of thinking.”

 

・「自分自身の目で見、自分自身の心で感じる人は、とても少ない。」

“Few are those who see with their own eyes and feel with their own hearts.”

 

・「可愛い女の子と一時間一緒にいると、一分しか経っていないように思える。熱いストーブの上に一分座らせられたら、どんな一時間よりも長いはずだ。相対性とはそれである。」

“When a man sits with a pretty girl for an hour, it seems like a minute. But let him sit on a hot stove for a minute – and it’s longer than any hour. That’s relativity.”

 

・ニュー・ヨーク・タイムズに掲載された、アインシュタインからの手紙の英訳は次のようなものである。

・〈人間の存在は、我々が「宇宙」と呼ぶ全体の一部であり、それは時間と空間において限られた一部である。人は自分自身、自分の思考や感情を、他から切り離されたものとして経験する。これは意識における妄想である。この妄想は、我々にとって一種の牢獄であり、個人の欲望と、最も近しい数人への愛情に我々を限定してしまう。 我々の努めるべきことは、全ての生きものと自然全体の美しさを包含する同情の環を広げることにより、我々自身をこの牢獄から解放することである。〉(ニュー・ヨーク・タイムズから)

〈A human being is part of a whole, called by us the Universe, a part limited in time and space. He experiences himself, his thoughts and feelings, as something separated from the rest a kind of optical delusion of his consciousness. This delusion is a kind of prison for us, restricting us to our personal desires and to affection for a few persons nearest us. Our task must be to free ourselves from this prison by widening our circles of compassion to embrace all living creatures and the whole of nature in its beauty.〉

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※「delusion」=妄想は、「根拠のないありえない内容であるにもかかわらず確信をもち、事実や論理によって訂正することができない主観的な信念」とある。病的にかかわらず、意識そのものは、そのような傾向を生じやすいものと思っている。何かを考えるとは、その自覚から始まるのだろう。