日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

◎孫の成長記録(姉2歳3ヶ月、弟5ヶ月)「わたし」で自分が深まっていく。

〇「わたし」で自分が深まっていく。

 お姉ちゃんは行動範囲も広がり、エネルギシュに動き廻り、散らかし方もますます派手になる。

 

 ことばも増え、自己主張が非常に強くなり、自分の思いを伝えたいという欲求も高くなって、「いや」という否定もはっきりいう。ただ切り替わるのも早い。

 

 最近はまっているのは、色とりどりの「付せん」をはがしては、何かに貼り付けたり、またはがして、他の個所に貼り付けたり、側で見ている弟に手渡したりする。

 今はそれを繰り返すことが多い。

 

 スマホの家族写真を見せたとき、自分のことを「わたし」というようになる。

 普段は、自分のことは自身の名前で呼んでいるが、この時は、弟について彼自身の名前をいうが、自分のことを「わたし」といい続けた。

 

「わたし」という言葉は誰が使っても、自身のことを指し、娘が「わたし」といえば娘を、友だちが「わたし」といえば友だちをさす。

 

 状況に応じて変幻自在に指示内容が変化する。だからものごとの「相対性」が理解しないと使えない言葉だ。

 

 おそらく娘の場合は、保育園などで誰かが使っているのをマネしている段階だと思う。

 どこまで「相対性」を理解しているのか怪しいと思うが。

 

「相対性」を理解することは、「関係性」をはじめものごとを深く考えることにつながり、今後の対話が楽しみだ。

 

 ある時わたしの前に立ち、自分の顔を手で隠し、「もういいかい」というので「もういいよ」と応えると、再々度繰り返しやめになったが、気にいることがあると、何回も繰り返すので、微笑ましい。

 

 弟は5ヶ月を過ぎ、目の前のものをじっくり見つめる時間も長くなり、追視できる範囲も随分広がってきた。

 

 反応の仕方にバラエティーがでてきて、なにかあると全身を使って泣きだすのも迫力あるが、あることに応じて眼の輝きや顔の表情が変化するのも面白い。

          ☆

 

〇子の自尊心を培う親の反応。

 鶴見俊輔が亡くなった記者会見で息子の鶴見太郎は父のことを次のように言っている。 

〈父は、私が子どものころから、いろんなことを話すごとに、「おもしろいな!」「すごいね!」「いや、驚いた!」と、目を見張って、心底からびっくりしたような反応を示す人でした。ですから、大人というのは、そういう人たちなのだろうと思っていました。

 

 ところが、いざ外の世界に出てみると、世間の大人たちは、何に対してもほとんど無反応でいる、ということがわかって、ショックを受けました。そして、このギャップをどうやって埋めればいいのか、ずいぶん長く苦労することになりました。------〉(黒川創『鶴見俊輔伝』)

 

 我が家では、妻の孫に対する反応に感心することが多い。わたしはどちらかというとあまり反応しないが、大事なことのようだと思う。

 

 子どもの育ちにおいて、「しかる」「しつける」などよりも、適度な「ほめる」ことが大きいのではないかと考える。

 

 児童精神科医の佐々木正美氏の次の言葉を思い出す。

〈子どもは、かわいがられるからいい子になります。かわいい子だから、かわいがるのではないのです。〉

 

 佐々木氏の考え方のエッセンスともいえる、『子どもへのまなざし完』「まえがき」から。

〇はじめに

お母さん お父さんへ

どうか忘れないでください。

子育てでなにより大切なのは、

「子どもが喜ぶこと」をしてあげることです。

そして、そこのことを「自分自身の喜び」とすることです。

子どもは、かわいがられるからいい子になります。

かわいい子だから、かわいがるのではないのです。

いくら抱いても、いくら甘やかしてもいい。

たくさんの喜びと笑顔を親ともにした子どもは

やがて、人の悲しみをも知ることができるようになります。

誰とでも喜びと悲しみを分かち合える人に成長するでしょう。

これは人間が生きていくうえで、

もっとも大切な、そして素晴らしい力です。

※佐々木正美 『子育てのきほん』(ポプラ社、2019)

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 子どもを幸せにするために、いちばん大切なことは何ですか、と聞かれたら、私はこう答えます。それは、自分のことを好きな子どもに育てることです。「自分っていいな」と思いながら毎日を生きている子どもは、それだけで幸せです。

 

 佐々木氏は〈自尊心が育っていなかったら、他者を尊重することなど絶対にできないのです〉と子どもにとってもっとも大切なことは、自分を愛する心をはぐくむことだとしている。

(※佐々木正美『子どもへのまなざし完』(福音館、2011)などから参照)