日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

◎「人類はコロナウイルスといかに闘うべきか」(ユヴァル・ノア・ハラリの発言から)

※ユヴァル・ノア・ハラリ氏は3月15日付アメリカTIME誌に「人類はコロナウイルスといかに闘うべきか――今こそグローバルな信頼と団結を」を投稿した。

 4月25日にNHK・ETV特集で「緊急対談 パンデミックが変える世界 ユヴァル・ノア・ハラリとの60分」の放送があった。

 その概要を記録してみる。

 

〇TIME誌の記事「人類はコロナウイルスといかに闘うべきか――今こそグローバルな信頼と団結を」から

 河出書房の案内:〈世界的歴史学者・哲学者のユヴァル・ノア・ハラリさんが、2020年3月15日付アメリカTIME誌に「人類はコロナウイルスといかに闘うべきか――今こそグローバルな信頼と団結を(原題:In the Battle Against Coronavirus, Humanity Lacks Leadership)」と題した記事を寄稿しました。

 ユヴァル・ノア・ハラリさんの著作『サピエンス全史』『ホモ・デウス』『21Lessons』を日本において翻訳・出版する河出書房新社は、ハラリさんとTIME誌の了解を得た上で、本記事の翻訳をハラリさんの著作全てを訳した柴田裕之さんに依頼、3月24日より自社サイト「Web河出」で緊急全文公開しました(全文日本語訳 約6,000字)。

 現代の「知の巨人」が“今、人類に本当に必要なこと”、“真の意味での新型コロナウイルスに対する勝利”とは何か、を明確に述べる!〉

 ★Web河出:http://web.kawade.co.jp/bungei/3455/

 

 その投稿記事の要旨は次のようになる。

・感染症の大流行への収束に向かう本当の手段は、協力と連帯と考える。

・人類と感染症の歴史があぶり出す問題点と安全確保のための方法を見いだし提起する。

・どこであれ、ある地域における感染症の拡大が、全人類を危険にさらす。

・人類が深刻な危機に直面しているのは、新型コロナウイルスのせいばかりではない。

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〇「緊急対談 パンデミックが変える世界 ユヴァル・ノア・ハラリとの60分」から。

 新型ウイルスの世界的な蔓延によるパンデミックのただ中で今、何を考えるべきか。多岐にわたる現状分析と警告。そしてあるべき未来を手にするためのメッセージ。

先日ETV特集の中で行った海外の知性への連続インタビューの中で、特に大きな反響が寄せられた、イスラエルの歴史学者ユヴァル・ノア・ハラリへの1時間に及んだインタビューのほぼ全体という。

 

 上記のTIME誌の記事を踏まえて、この番組から私が印象に残った発言から。

・全体主義的な体制が台頭する危険性があります。通常、民主主義は平時には崩壊しません。崩壊するのは決まって緊急事態の時なのです。緊急措置が適用されるのは危機の間で、危機が去れはいつも通りに戻るものと思いがちですがそれは幻想です。緊急時だからこそ民主主義が必要です。

 

・データは透明性を確保されるべきです。そしてもうひとつ、政府の決定にも透明性がなければいけません。私は自国の政府の決定を監視できなくてはなりません。監視は両方向であるべきです。これが市民が持つべき力です。このような情報にアクセスできれば市民はより大きな力を持つというわけです。

 

 それに対し市民はどのようなことを意識するのか。

・信ずるべき情報を慎重に吟味し科学に基づいた情報を信頼すること。

・そして科学的裏付けのあるガイドラインを実行すること。

・私たち一人一人の務めは、信頼に足る組織から出された指針を忠実に守ること。

・陰謀論の罠、いかがわしい情報に陥らないこと。

・政治的状況に目を光らせ、その行動を監視すること。

 

 なお、ハラリ氏の言う協力、信頼は主に世界的な視野で述べているが、協力、信頼および共感に対しては、地域社会、身近な自分たちの人間関係における要だと思う。

 また、科学の発達に対し大きな信頼を寄せているが、それを技術に応用するとき、運用の仕方により、私は科学の発達は陰陽両面があると思っている。

 さらに信頼のある情報をどのように見分けるのか大きな課題となる

 

※この番組はインターネットのETV特集欄で見ることができる。

 また、「note」で、原正樹氏が「緊急対談 パンデミックが変える世界~海外の知性が語る展望~」11日放送番組の一部を文字起こししている労作がある。これはジャック・アタリ氏の後半の発言も記録している。

 https://note.com/waterplanet/n/n163fe2428a97/