日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

◎3度目の緊急事態宣言に思う。(岩田健太郎氏の提言など)

〇大阪、兵庫、京都、東京に3度目の緊急事態宣言が発令されるという。

 今度の非常事態宣言についての印象は、ひたすら市民に「自粛のお願い」してばかりで、政府などの対応があまり伝わってこない気がしている。それなりにしていると思うが、ブレーキとアクセルを同時に踏んでいる印象があり、何となく緩慢な動きのように見える。

 

「自粛」は「自分で自分のおこないをつつしむこと」ことである。

 自由には限界があり、殊更「公共の福祉に反しない限り」といわなくても、自粛は日々の暮らしや社会生活で、日常的に行っていることである。

 

 この度のコロナに関しては、大変だなと思う人が多いので、割合簡単に、普段の暮らしで当たり前のようにしていることなどが、かなり制限される「自粛のお願い」に同意して取り組んでくれるが、度々されて、しかもいつまでしたらいいかの期限があまり明確にできないので、いい加減だれてきて、効果は徐々に薄れていくのではないのか。

 

 わたし個人的には、経済支援、休業補償や検査体制、人的支援などいくつかの施策を重点的に優先的にきちんとして、かなり思い切った具体的な目標を掲げてもいいと思っている。

 

 それと、今度のコロナ関連の場合のように、その時点で、どうすれば適切な判断ができたのかは、ある意味よく分からないところがある。

 後から振り返って、こうすればよかったというのは言えるかもしれないが、それも実際のところ何とも言えない面もある。

 

 だから、批判するところは適切に批判すべきだと思うが、特定の個人の人格否定や揶揄することはしてもはじまらない。

  

 そして、ますます困難を極めている今の段階で、今後に向けて、今までのことを振り返り反省しながらの適切な提言は大切にしたい。

 そんな折、岩田健太郎医師が、日本のコロナ対策の課題を語った記事がAERA 2021年4月26日号に掲載されるそうである。

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〇岩田健太郎医師が日本のコロナ対策に苦言「第4波は来るべくして来た」(AERAdot 2021/04/20 )

  新型コロナウイルスの第4波が本格化している。AERA 2021年4月26日号で、感染症専門医の岩田健太郎医師が、日本のコロナ対策の課題を語った。

 

――日本国内でも従来のウイルスよりも感染力が高い変異株が急速に増え、新型コロナウイルス新規感染者の増加が続いている。神戸大学大学院教授で感染症専門医の岩田健太郎医師は、この第4波は「防ぎようのない自然現象として起きたわけではない」と指摘する。

 

 第4波の到来を防ぐチャンスはありました。国内で最初に変異株への感染が報告されたのは昨年末でした。その際、水際対策や、変異株に感染した人と濃厚接触者に対する疫学的な調査を、徹底的に強化するべきでした。当時は「変異株はまだ面的な広まりがない」といった理由で、海外に比べれば緩やかな対策しかとられませんでした。しかし、山火事と同じで、面的に広がっていない時こそが消火のチャンスだったのです。新規感染の半数以上を変異株が占めるまで広まってから抑え込もうとしても無理です。

 

■人との接触で感染増

――「第4波は来るべくして来た」という。なぜか。

 単純なことで、それは対策を緩めたからです。十分に感染が抑えられていない段階で、第3波の緊急事態宣言を解除してしまいました。当たり前ですが、対策を緩めて人と人との接触が増えれば、感染は増えます。

 

――さらに、とられた対策自体の甘さも指摘する。

 第3波がなかなか収まらなかったのは、感染者数や重症患者数が第1波、第2波よりずっと多くて山が高かったのに、対策が1回目の緊急事態宣言の時よりも全体的に弱い内容だったからです。しかも、会食や旅行を推奨するGo Toキャンペーンが続き、なかなか緊急事態宣言が出ませんでした。

 

――岩田医師は、「緊急事態」にあるというメッセージが国民に伝わらなかった、とみる。

 人出の減り具合は鈍りました。「自粛疲れ」と言われますが、個人の「行動変容」に頼っているようでは、感染対策はうまくいきません。もちろん、一人ひとりに感染を防ぐ行動をとってもらうことは大切ですが、そのためには、政府や自治体のトップが、矛盾のない明確なメッセージを出す必要があります。

 

 第3波の際にGo Toによって矛盾したメッセージを出し、失敗したにもかかわらず、また第4波でも聖火ランナーを走らせる、緊急事態宣言は出さずに「まん延防止等重点措置」で済ませる、といった対策や活動が続いています。責任ある政治家が断固として感染を抑える決意をしているようにはとても見えません。いくら不要不急の外出を控えて下さいと訴えても、人々の心には響きません。

 

■政府は具体的な目標を

――問題視するのは、具体的な目標を打ち出さない政府の対応だ。

 そもそも、政府がどのような状態を目指しているのか、目標がわかりません。菅義偉首相は「国民の皆さんの命と健康を守り抜く」「新型コロナウイルス感染症を一日も早く収束させます」と言いますが、抽象的で、人によって解釈が変わります。

 

 感染者ゼロを目指すのか、それとも1日の感染者数が数百人程度になればそれでよしとするのか。具体的な目標を明らかにするべきです。

 

――国内の新型コロナウイルスによる死者はすでに9千人を超えている。岩田医師は、「感染者増加に4週程度遅れて死者の報告が増加するので、死者が1万人を超えるのは時間の問題」という。

 これだけ大勢の死亡者が出ている国は東アジアにはありません。米ジョンズ・ホプキンズ大によると、日本の人口10万人あたりの死亡者数は7.53人。韓国(同3.45人)や中国(同0.35人)などと、差が大きくなってきています。

 

 亡くなった方の多くは高齢者です。経済を回すにはある程度は高齢者が亡くなるのは仕方ない、という目標も、理論的にはあり得るでしょう。もし責任ある政治家がそう考えているなら、きちんと国民に、日本の経済を守るためにこうしたいと説明し、国民の納得を得るべきです。

 

 しかし、実際には、上っ面のきれいごとしか言いません。具体的な目標を掲げると、達成できなかった時に失敗したと非難されるからでしょう。責任を回避するような態度からは、経済界などにも忖度しながら何となく落としどころが見つかればいいといった、やる気の無さしか感じられません。

 

――東京五輪開催まで100日を切った。だが、収束までのロードマップはない。

 東京五輪・パラリンピックについてもいまだに「開催する」と言うだけで、感染状況がどうなったら、どのような形態で開催できるのかを責任者は誰も明確にしません。

 

 観客を一切入れず、選手と関係者だけにすれば開催は不可能ではないかもしれません。ただし、それでは、「人類が新型コロナウイルスに打ち勝った証し」としての開催にはなりません。しかも、今のような国内の感染状況では、危ないから選手団を派遣できない、という国も出てくるかもしれません。》

(構成/科学ジャーナリスト・大岩ゆり)※AERA 2021年4月26日号より抜粋)

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 併せて、次のような見解もある。

〇【コロナ「医療逼迫」に「国民が我慢せよ」は筋違い 森田洋之医師が語る「医療の不都合な真実】(東洋経済オンライン:大崎明子記 2021/04/22)を読む。

 森田氏は〈日本の医療システムは、医療提供を国で管理するのではなく各病院の自由に任せているため、経済学で言う「市場の失敗」が起きているのです。患者数という需要側にもまして、医療の提供という供給側に問題があるのです。〉と述べる。

 氏の主張は、経済学者・宇沢弘文の、医療を市場原理に任せてはならず、「社会的共通資本」として公的に管理すべきという考え方に立てば、医療の提供を市場に任せてきたのが間違いとの見解で論を展開している。

 細部の認識はよくわからないが、医療の提供を市場に任せてきたのが間違いとの見解は一理あると思う。