日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

「凸凹のためのこころがまえ」3(子育ちアイリス通信8)

※今回も先回に続いて、三木崇弘著『リエゾン-こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』から見ていく。

 

○「手伝ってもらってできる」ことの大切さ

本書2章に、「手伝ってもらってできる」ことの大切さ、との節がある。

《子どもに限らず大人もですが、最初から何でも一人でできる人はいません。大まかな順番としては「全部してもらう」→「手伝ってもらってできる」→「一人でできる」の順かなと僕は考えています。

この「手伝ってもらってできる」はとても大事で、子どもが何かを身につけ成長するためには、簡単すぎず難しすぎず、誰かに手伝ってもらってやっとできるぐらいのレベルの課題に取り組むのが良いとされています。》

 

発達に大きな凸凹がある子の場合、同年齢の子がなにげなく出来ていることが、出来ないことが多くある。それに対して本人よりも周りの人たちが問題視することがある。

今の社会は、自分のことは、自分一人でできるようになって一人前とか、最低限のことは、一人でできるようにならないと生きていけないなど自立主義的な考えが強く、子どもの育て方にも影響を与えている。

むろん「全部してもらう」ことから「一人でできる」ようになる達成感は今後の成長にもたらすものは大きいが、何事もそうだが、それを発揮できる、その人の心身状況が必要である。

 

そこで、「手伝ってもらってできる」ことの登場である。

今まさにできないことは、大人がサポートしてあげてできれば良い。

多くの人が何気なくできている自転車に乗る、水中を泳ぐことなども、おそらく親など誰かの手を添えられて出来るようになったことが多いと思う。

子どものチャレンジや成長には必ず「大人が手伝ってあげるけれど、やったのは本人」という段階が存在する。

 

ある程度の年齢になったら、一人でやらせることも増えてくるけれど、あくまで成長段階には個人差がある。

そこで、気長に子どもに伴走しながら「(手伝ってもらったけれど)自分でできたね!」という結果に繋げてみる。すると本人の手応えになり自信も生まれ、次に別のことにも取り組むモチベーションも湧いてくる。

この「子どもの心身状況をみながらが、今ギリギリできないことに合わせ、手伝ってあげて達成させる」ことが大切である。

 

○気持ちの面でも「手伝ってもらってできる」が使える

上記のことは行動面に関してだが、気持ちの面でも大切である。

どの子でも、多くのことを親など家族に支えられて育まれていくが、「自分の足で立ち、自分の頭で考える」ことをおさえ、ひとりの精神的な人格者として、そして「心をもつ者」として見ることが基本になると考えている。

 

発達に大きな凸凹がある子の場合、嫌なことがあっても自分の気持ちを上手く表現することができなく「-----別に!ん――!」みたいに終わってしまうことが多い。

その時に、(子どもの話を)じっくり聞いて、心の整理の手伝いをしてくれる人が身近にいることが子どもにとって心強い。

辛い気持ちをうまく表現できない時に、助けてとか、手伝ってと気兼ねなく言える人がいるという安心感は大事だと思う。

その関係を、時間をかけて作ることからはじまるが。

 

こうして身近な人に気持ちを受け止めてもらうことで、自分の気持ちとどう付き合えそうか、ぼんやりでも見えてくる可能性がある。

学校の場合は、一人ひとりに合わせるというより一つの集団として捉えがちになるし、親御さんなどは、大変な思いを抱えていられる方が多くいらっしゃる場合があり、この辺りは放課後等デイサービスなどの役割かと、わたしは考えている。

また、親御さんも、気軽に気持ちを受けとめて心の整理をする手伝いも、放課後等デイサービスなどの役割と思っている。

 

○「解決できなくても付き合ってあげることの意味」の節で著者は次のように述べる。

《大人としては、もし介入するのであれば「なんとかしてあげたい」「解決してあげたい」「すっきりさせてあげたい」と感じると思います。僕もそうです。でも実際には、いますぐには解決できないこと、パットとアイデアが思いつかないこと、どうすることもできないことがたくさんあります。そういう時は「手伝ってもらって-----」の途中まででも良いのではないかなと思います。

つまり、「なかなかうまくいかないもんだね-----むずかしいね-----」と寄り添いながら、その「うまくいかなさ」を一緒に味わうことも大事なことです。》

 

うまくいこうがそうでなかろうが、大人が自分自身の気持ちがどうあろうとも、少なくとも、その子に対し淡々と温かいまなざしを持ちづけること。

いろいろなことがあろうと、大切なのは対応する大人のコンディションであり、ほどほどの付き合いをずっと続けることだと考えている。

-----

※三木崇弘著『リエゾン-こどものこころ診療所―凸凹のためのおとなのこころがまえ』(講談社、2023.1)

放課後等デイサービス「アイリス」ホームページ

https://www.gurutto-iwaki.com/detail/2748/index.html