日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

◎館野泉・鬼の弾くピアノ演奏(たまゆらの記㉔)

〇館野泉・鬼の弾くピアノ演奏を観て

12月30日にNHK BS1「鬼が弾く 左手のピアニスト 舘野泉」を観る。

番組を、自分の生き方・暮し方に引きつけて見ていた。

 

番組は今秋、世界的な左手のピアニスト、舘野泉(86)が「コロナ禍を生き抜く力を宿す」新曲を携え、集大成となるコンサートツアーを敢行。約20年前の脳出血で右半身に残るマヒ、コロナ禍のコンサート中止、左手に走る激痛、そして老い。数々の喪失や絶望を、あふれ出る音楽への情熱と不屈の精神で乗り越える舘野に密着し、気鋭の若手、藤田真央との連弾収録、さらに新曲『鬼の学校』を携えリサイタルにも挑む。あくなき渇望が生み出す不屈の調べを届けるとの趣旨。

 

見ての感想は、私と同じく足元がおぼつかないが、それでも杖なしで歩いている。奥さんはフィンランドの居宅にいて日本にいるときは一人暮らしである。

 

2年前頃から電動車椅子を駆使して外出し買物などをし、食事作りも動きが悪い右手を使いながらご自分でされている。

わたしと同じように身体を動かさないと固まってしまうので、できるだけ動くようにしているという。

 

コロナで演奏会が中止になることが続き、超多忙のときにはなかったがげっそり痩せたそうだ。

館野さんにとって音楽は空気のようなもので、「鬼の学校」の演奏は4人の弦楽器奏者とともに迫力を覚えた。

 

そして1日の終わりにワインを美味しそうに飲む顔がとても印象に残った。

老いてますます盛んで、私より11歳上だが大層な刺激を受けた。

 

舘野泉さんが脳溢血で倒れたのは、65歳の時。

発作時は意識消失、嘔吐、痙攣、顔面紅潮、脳圧亢進による徐脈などを呈し、四肢は運動不能で、大小便の失禁などを起こす。

発作後の脱落症状として、脳性片麻痺(半身不随)を生じ,麻痺側では筋緊張が強くなる。麻痺が長引くと筋委縮症を生じる。

倒れた直後は発語も歩行もままならなかったそうだ。

 

舘野泉著『絶望している暇はない 左手のピアニストの超前向き思考』(小学館、2017年)の中で次のように述べる。

舘野:「病気で倒れた時の話になると、皆口々に、〝辛かったでしょう〟〝大変でしたね〟と言う。たしかに体は不自由になったし、両手でピアノを弾くこともできなくなった。でも、当の本人は、気に病みもしなかったし、絶望もしなかった」

 

また、人生初のリハビリを振り返り《新しい体験に夢中で、絶望している暇なんてなかった》そして、そのリハビリを「楽しかった」と言う。

舘野:「辛くなんかありません。だって、毎日、何かができるようになるから。もちろん、こけたり失敗したりすることも多いですよ。自分でもそれがおかしくて、家内に話すと一緒に笑ってくれた。しばらく経ってから、家内に〝リハビリ期間ほど、わが家に笑いが絶えなかった日はなかったわね〟と言われました」

 

参照:ブログ・日々彦「ひこばえの記」(2020/1/26)

◎ある制約から可能性をひろげる(館野泉さんに触れながら)

https://blog.hatena.ne.jp/hibihiko_ya/masahiko.hatenablog.com/edit?entry=26006613502454813