日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

◎友人T・Yさんの旅立について。

〇T・Yさんから10月23日にファクスがあり、彼の携帯に電話して話を交わし、その後、ファクスの交信をしました。

 奥さんをはじめみんなに支えられて生かされているという心が伝わってきました。

 

 4日に腸閉そくの痛みで受診、そのまま入院になりましたが、これ以上の治療は無理ということで19日に退院したそうです。

 その後、24時間対応の訪問介護クリニックに診てもらうことになって、みなさんに支えてもらっての暮らしだそうです。

 

 あまり食べられない状態から、家での暮らしの中で食べたいものが出てきて挑戦しているそうです。そんな中での電話でした。

 厳しい状況だと思いますが、声を聴けてとても嬉しかったです。

 

 奥さんによると、彼女のヘルパーの経験、看護師・介護師の娘たちに支えられての生活だそうです。

 

〇彼は11月8日に亡くなり、その後、奥さんからファクスで次のような連絡がありました。

 

〈車椅子に移動して、パソコンの前には行きました、今日はこれだ、と。

Facebookに「皆さん さようなら」と書くのが最後と言っていたのですが、かなわぬままでした。

------6日から私と3人の娘でケアをして、8日の朝、息をひきとりました。

------家族ら14人で納棺し、火葬場でのお骨拾いも、0歳の孫まで静かに行いました。

------遺影はY子さんと一緒に登山した赤岳登頂時ので、とてもよい表情になりました。

ありがとうございます〉

 

 奥さんや子どもたちに見送られて、さぞや穏やかに旅立たれと思っています。

          ☆

 

 彼とは北海道の試験場で知り合ってから40年以上たちますが、よく交流するようになったのは、20年ほど前ある共同体を離れてからです。

 その後度々、様々な話を交わすようになりました。今年に入って、私の体のことやコロナの影響でお会いしていなかったです。

 彼の病状の厳しさを知るにつれて、お会いしたいと思いながら、果たせないままでした。そんな折先日ファクスがあり、携帯で連絡を取り合いました。

 

 彼は心底から明るい方で、話しだすと対から次へと話題が尽きることがありませんでした。

 関心ごとも幅広く、社会のことから共同体のことまでよく話し合いました。

 趣味も多彩で、山のこと、文学、映画など、いろいろな話を交わしました。

 書くことはあまりしていないようでしたが、Facebookの記載は短文だが考えさせられる内容で面白く、私の記事に対してよくコメントをもらいました。その視点は鋭く、楽しみにしていました。

 

 近来親しくしている方の訃報を聞くにつれ、いろいろな思いが出てきますが、同年代の長年旧交を温めてきた人の死去はことさら寂しいです。

 

 ここに、がん発病後の記録から、彼らしい文章からいくつかあげます。

           ☆

 

2016.4.7:69才にして始めての入院、ガンと決定。2016年4月6日 - 市民病院のかかりつけ医に体の不調を訴える。

 尿がかなり濃いアメリカンコーヒーぐらい。体のあちこちがかゆい。早速エコーで調べると、すい臓と肝臓との管の合流のところに腫瘍が出来てるらしい。すぐ診断書が出され、市民病院へ、明くる日入院となる。腫瘍が良性か悪性か断定するのにいろいろ検査。

 まず内視鏡を十二指腸まで入れ腫瘍のサンプルを取る。結構こたえる検査でした。

 何日が後、ガンと判定される。

*自分がガンになった時は、こうすると考えていたこと。

・自分の心の動揺をみてみよう(観察する。おもしろがる)

・自分の身体の内部に語りかけてみよう。(そんなセッションがあったかな)

・老いていくこととか、死に向かう時とか、その身の回りの条件環境に対して不平はない。その時々でOK

・いろんな治療を楽しむ、病院生活も楽しむ、いろんな患者をみてみる。

・この際、自分と向き合ういいチャンス、神からプレゼント。

・病院生活からみえてくるものがある。

・ガンを育てたのも、自分の身体、何がそうさせたか少しでもみえたら(自分なりの実感)

 *そんな、こんなと、その晩うかんできたことです。

 

2016.4.18:入院中に心に残ったテレビ番組2016年4月17日 昨夜- 市民病院でみたEテレで2つの番組が心に残った。

 *スイッチインタビュー渡辺謙と山中伸弥は先週の続き2人とも素直な言葉、ともに関西人として面白い。話を聞いていると力をもらう。

 謙さんの白血病を乗り越えた後の、心の変化はおもしろい。なにより、すなおで頑張ってる風でなく、その人らしく生きたらこうなった。何かヒントあり。

 *次の肺がんサバイバーは、余命半年と言われたフリープロジューサーが、いろんな治療をして、6年以上生きてる姿を見る。

 その人は、いろんなトライすることが生きることかも。自分はどうか、自分にはどううつるかおもしろい。これからのヒントになる。少なくとも自分はこうしないな、自分らしい、すごしかた、終わり方がみえてくる。

・手術できたら、後が問題。

・死が身近になると、穏やかになるもんだ

・長く生きるだけでなく、自分らしさが大きい。

・そんなに治療にトライしない。保険が適用されるものに限る。

・身体のシグナルにきいてみる。生活スタイルは変えられる。

 病室で寝られない、夜を過ごしながらなんとなく。

 

2016.6.17:人生始めての入院、その時のメモがあったので載せます。検査で2週間、手術で一か月、退院して17日たちました。

 不思議なものだ。いろいろ書く気になるなんて、なってみないとわからないものだ。

 4月医者からすい臓がんと断定され、不思議とショックなし、でも生死がグット身近になった。

 窓から見える武庫川の桜も見え方が違うクリアーだ、やっぱり景色は心で見ているんだ。入院生活意外といいもんだ。

 十分な内省する時間がある。(することがない)

 病気が検査ではっきりわかるようになり、それにより生死がせまってくる。これが少し快感かも。神様があたえてくれた貴重な時間かも。

 自己納得(生きるコンセプト軸にそった)で終う。終い方とは(方法ではなさそう)こうすりゃよかったはない。後がないので。

 

2016.8.13:術後3か月たちました。現在抗がん剤(経口)4週間やって2週間お休み、来週から抗がん剤再開、これを4クールやって、今年暮れに終わる。あまり副作用なし、食欲7割ぐらい戻る、体力回復のためにとにかく歩く、小説、映画を見る意欲が出てきた。

 体力がないと、小説の内容がなかなか頭に入らない、内面の葛藤などは読み切れない、このごろやっと戻ってきた。

 映画も2時間集中できない、そろそろツタヤも再開できそうだ。

 小説も映画もエロチックなものは、ダメになった。

 心の深いところを尋ねた時(自分の)エロスと生命力が心の深いところでは同じステージにあるのを、発見したのを改めて思い出した。心と身体、切り離せないようだ。

 とにかく、一年計画で山に登るのを目標にしてます。

 最近末娘に子供(娘)でき孫六人になる。男の役割は終わたかな。

 妻は末娘からおよびがかかり、何か嬉しそう、親父は出番がないようだ。

 

2017.2.13:身体のシグナルをきく

 抗がん剤をやめて2ヶ月、検査結果微妙、来月もう一度検査でわかりそう。

 そう簡単ではない、ゆっくり体とつきあっていくのがいいようだ。この機会に自分の身体のシグナルを訪ねてみたいと思っている。昔読んだ本に、身体の内部のいろんなところに意識を及ぼし、そこから発するシグナルをとらえるミッションがあったなと思いだした。心の深い部分なので、そばに専門家についてもらい、誘導してもらうみたいだ。やっぱり自分の身体の意志をちゃんとキャッチしたいものだと思う。

 がんになって無性に興味がでてきた。

 誰かそんなセッション、ワーク知っていればしらせてください。

 

2017.2.18:さよならカルト村(本)出版

 新聞の本の紹介欄の囲み記事にさよならカルト村の出版の案内があった。読んでないが、紹介文は私が居た村のように思われる。感想はなかなかしたたかに暮らして、その人らしい視点を育てたのを思った。私の娘3人も大人になって話の中からしたたかに、生活してたのがうかがえる、周りの大人に対して結構冷静に見てたんだと思わされた。まあこの3人の娘の両親(私ら)も結構冷静に矛盾を見てたし、距離を持ってみてた部分もあったなと思わされた。

 この作者も学校の図書館で本を読んで視点を培ったみたいで、私もこずかいで映画、本を仕事の合間にたくさん仕入れたことがあったなと思いだした。どんな場所にいても、自分なりの軸、視点をもっているのがいいな。

 

2017.10.22:君たちはどう生きるか。吉野源三郎

 最近漫画本になったりして、話題になっている。80年前に書かれた本らしい。私が小6の時学校の図書館で出会って衝撃を受けたのを今でも鮮明に覚えている。ちょっと恥ずかしく、かくして読んでいたみたい。主人公のコペル君の姿がその時の自分とかさなって、何度も読んだ気がする。考えてみればそこから、自分の生き方は一貫しているなーと、ちょっと感動。こんな本を書いてくれた作者に感謝、この本に出合った奇跡、喜寿になってしみじみ思う。人生のいろんな場面でいろんな選択したけど、自分で納得するまで考え決定してきたその核になった本、有難うと改めて思う。

 本の力、出会いいいですね、その時の内面とピッタリ響き合うのに出会った時、至福の時間ですね。

 

2017.10.31:朝早く家を出て、鳥取の大山登山、夫婦2人登り3時間頂上で、やさいたっぷりのラーメンを作り、大満足初雪も溶けていい天気。スキー場のそばの国民宿舎に泊まり、明くる日、鳥取砂丘、側のキャンプ場で暖かい昼食作り、ゆっくりして大満足。

 

2018.4.8:沈黙の人(小池真理子)を読んで。

 この歳になると結構、身に迫る物語だった。パーキンソン病を題材に、作者の父親の自伝的小説。自分もだんだん人生を振り返ることが多くなる。地が楽天的な私は完全な肯定的にとらえている、いろんなことも今の自分になってて、大事なものと思える。 

 特に私の原点に近い青春時代に最初にはっきり自分で選んで決定した生き方の出発の地、北海道根釧原野のコミュニティでの生活、そこの人間の心に触れて、一人で冬空に涙したことなどが心に残ってる。

 その地のことを小説に書いた本が出来たようだ。ある人から私のことがうまく書かれてるよと読むようにすすめられた。何か素直に読もうと気にならない。あの時代のことは私の中で宝石のように今輝いている、他にことで変えたくない感じだ。

 夢中になった恋愛(そんなに多くない)よりも輝いてる感じ、夢中で過ごした時代だったと改めて思う。やっぱり青春の真っただ中だったかな。

 

2018.7.19:7月6日~10日で久しぶりに単独テント縦走、ゆっくりとコースタイムの2割増しですな。このコースだけまだ歩いてなかったので。71才この年齢でないと味わえない山行でした。テントはまだ何年か行けるかな。

 

2018.11.14:秋も深まったこの頃、夫婦2人で蒜山登山から湯村温泉に泊まり明くる日、津山城跡,旧閑谷学校へ行く、閑谷学校は想像以上にいいとこでした。山は紅葉終わり、下は紅葉真っ盛り。ひと月に一度ぐらいは、山と温泉行こうと2人で話してるこのごろです。

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2019.12.29:末娘に男の子生まれる。奥さんは生まれる少し前からサポートに2週間行く。私は孫の顔を見に奥さんを迎えに行く。7人めの孫でした。これで終わりかな。

 

2020.6.1がん転移その後。いろんな人からコメント、電話、暖かい気持ち、ちょっと元気がでる。でも反面もういいかとも思ってしまう。4年前の手術の時の体力、気力と今の低下具合を考えるとそんな気持ちにもなる。癌のサイトを見たりして何が合ってるか分からないのに、やっぱり不安なんかな。それぞれにその人が選んだ治療、終い方がいろいろ思われてどれも共感できそう。朝起きて調子がいいと積極治療、悪いと、もういいかと揺れ動く毎日です。

 

2020.7.9:退院して、落ち着きました。抗がん剤は本当に大変でした。身体の細胞に作用するとはこんなことか。想像を絶する体験でした。すい臓がんの性質から進行が月単位で進み、あまり種類のないなかで、標準の一番きついのをやりました。いろいろホローをしてもらい担当の若い女医(娘ぐらい)親身にしてもらい、もう二度とするものかと思っていたのが、退院するときはこの先生に預けようという気になりました。でもこのがんはそんなに治療方法は多くなく、これからどうするかどう終末を迎えるか自分で決めないと、退院前のがん専門の看護師さんとの面談でいろいろ聞いてもらえました。どうするかはこの後で書きます。よろしく最後までそれとなく見ていてください。

 

2020.7.31:いろいろ心配してくれてありがとう。まず前提にそれぞれその人のいきかたがある、死に方もあると思います。私が共同体と言われる村を出る時はっきり決めたこと、それは世間の普通の人と一緒に暮らすことでした。近所の人、いろんな宗教の若い人(近くにいろんな宗教がある)としゃべったり。農業をやる人、後継ぎでやってる人としゃべったり。

 だから今の保険での標準治療をやって、どんな気持ちになり、医療従事者の姿に接していろいろ考えさせられました。私のおやじは普通の親父でしたが、にてきましたね。尊敬してますよ。それぞれの生き方死に方を出来ることなら否定しないで見守ってくれると嬉しいですね。

 

2020.8.7:抗がん剤治療のこと。

 2回めの抗がん剤治療終わって回復期一週間気が付いたこと。だいぶ食欲戻り、体重はこれから、これだけ痩せるかと思うだけやせ、ちょっと近所散歩。この標準治療をやると体力落ちるのは仕方がないが、それよりも、もっと大事なことは精神的に落ち込んだり、およよと予期せぬ事態に苦しんだり、心の部分の大きさを思われる。だからやめとけと言う体験者が多いと思われる。いい体験ですな?

 

2020.8.14:自宅でがん療養中、一番大切なこと。連れ合い妻の存在がつくづく思われる。生活面も大きいが。なにより精神面、心の支えになってる。これが一人での生活だとぞーっとする。

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