日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

◎個人や組織の所有から、社会で活用していくような仕組み

〇家の整理や処分で思うこと
 家の処分に関しては、先ず子どもや親族、ごく親しい知人に声かけ、誰もいないなら、精神障害者の退所支援をしている精神保健福祉支援グループにと考えていた。この地区では空き家が増え続けていて、それだけは避けたかったが、築40年近くの中古の家では住もうという人はなかなかいないというようなことを聞いていた。

 知人の知り合いの不動産屋に相談したところ、家を探している人がいるとのことで、見に来てもらったところ、気にいってくれて、売買契約ということになった。もともと島根県の田舎の方で暮らしていた方で、主人をなくし、奥さんと子供二人は出雲市内に務めていて、アパート暮らしをしていた。 

 嬉しいことに、農業の体験もあり家庭農園に関心が高く、家にあるもの、畑関係のもの、使えるものは殆どそのまま使いたいとのことで、話はとんとん拍子にすすんだ。私たちの持っていくものは最小限度と考えていたので、その一家の人たちと相談をしながら進めていけるので、とても有難かった。

 また、大事に使ってくれそうなもののいくつかは、声かけをして、親族、知人に持っていってもらった。
 この際ほとんど処分しようと考えている書籍については、活用してほしいと思い、知人、図書館、学校などに声をかけたが、特別高価なものがあるわけではなく、ほとんど引き取ろうとしない。

 そこでいろいろ調べていくと、島根県被害者サポートセンタ(ホンデリング・本で広がる支援の輪)など、ものの活用を社会に還元するような取組をしているところがあり、そこに声かけたりしている。
 

 このことで、以前所属していたコミュニティのことを考えた。
そこは財布一つの無所有一体生活の理念のもとで、参画するための次のような誓約書がある。

「私は,此の度,最も正しくヤマギシズム生活を営むため,本調正機関に参画致します。ついては,左記物件,有形,無形財,及び権益の一切を,権利書,証書,添附の上,ヤマギシズム生活実顕地調正機関に無条件委任致します。」
 それは、そこに入村するためのイニシエーション【initiation】(特定の集団に成員として加入する際に行われる儀礼。)的な役割もあり、その組織の運営上の根幹をなしている。

 その理念のもとで仕組みとして「世界の蔵」や「村のお店」を設けて、一応その組織内で活用されている。参画する人にとっては、様々な思惑はあったとしても、不充分ながら分かりやすい仕組みではあった。私もその村を離れるときに、立ち合いのもとでいくつか譲り受けた。だが、その組織に無条件委任したものだけが使えるということでは、組織の所有物にすぎない。

 なお、無所有というのは、空気や水のように、本来的に、だれかのものといえるものは一切ないことで、無所有一体というのは、本来的に世界はそのようになっているとの見方である。

 無条件委任というのは、人間同士の信頼にもとづくリスクを伴った、そのリスクの絶えざる検証を欠かすことのできない約束事にすぎない。(※2015.03.19のブログ参照)

 

 近来、書籍については、地区や大学の図書館を活用していて、リクエストするとある程度取り寄せてくれるので、ほとんど買わずに済ましている。手元において繰り返し読む本や、資料扱いするようなものもそれほど多くはなく、自分にとってはそれで十分である。

 ものについても、そのような社会的な活用の仕組みをと思っているが、それを付き進めていくと、ものだけではなく人との共存共栄の仕組み、気の合った仲間との連携やコミュニティさらに地域社会のあり方などに広がっていく。