日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

◎サザンオールスターズが好きだ

 最近音楽番組はほとんど見ないが、サザンオールスターズは好きで、注目している。

 サザンオールスターズ・桑田佳祐の、12月2日に開催されたパシフィコ横浜でのコンサート「平成三十年度!第三回ひとり紅白歌合戦」を紹介した記事があった。

 エイズ啓発活動「Act Against AIDS」の一環で、5年ぶりに開かれた「ひとり紅白」だそうだ。

 

 サザンの魅力は、メンバーの息の合ったチームワークとそれを支える多くの仲間がいて、全力を尽くして、どこまでも多くのファンに可能な限り堪能してもらうこと、そして自分たちの力の限りを尽くすための高い情熱と綿密な企画力それを支える卓抜な技能にある。

 

 1978年に「勝手にシンドバッド」でデビューしてから、2018年に40周年を迎えたNHKホールでの番組で、メンバーがお互いについて語っている場面が紹介されたことがある。

 華々しい桑田や共演者たちに溶け込みながら落ちついた感じを出しているメンバ―の中で、奇妙な動きをしている野沢秀行(パーカッション)について桑田は、「音楽的には彼がいてもいなくても変わらないと思うが、彼がいないと、サザンは味気なくなるんです」というような発言があり、印象に残っている。

 

 活動はむろん、その発言も共感するものがある。社会風刺や反戦歌などの楽曲を作ることについて桑田は次のようにいう。

〈「光を描こうとすれば、どうしてもその対極にある忘れてはならないことも描かなければならない」

「世の中が不穏で歪んでいれば、歌だって自ずと歪むと思うんです」。

「僕だって自分の日常がありますから、全ての問題について毎日思い続けていられるわけじゃない。(中略)ただ、それでもおかしいことはおかしいと思うものだし、たまたまそれがきっかけで音楽が生まれたのなら、それを歌えない空気も、そこで歌えない自分も僕は嫌なんです」。

「戦争はなかなか無くならないことも、平和を訴えるうえでのある種の虚しさも、大人ですから薄々は気付いています。でも言うだけでも言わなきゃ夢が持てない。僕は夢のない世の中が一番怖いと思っています」。〉

 

 桑田の反戦を訴える姿勢は祖母や父の影響によるものであり、特に父からは満州からの引揚者だったこともあって、満州での話や「品格とは真逆の、人間が究極の状態に追い込まれた時の様子」などの話をよく聞かされていた事を述べている。

 

 また、次のような記事もある。

〈2015年の『SWITCH』でのインタビューでは、「メインストリームで風刺やプロテストソングを歌うアーティストが少ない現代で寂しさや使命感、もしくは矜持のような感情を抱くことはありますか?」といった質問をされ、桑田は「全くありません。そこは人それぞれですから。若い頃は恋愛や遊びに大半の時間を割くし、何より今の若い人と僕らでは生活環境も情報量もまったく違うでしょうから」「(自身に特定の主義主張や思想が無い事や、エロティックな楽曲を多数制作している事を述べた上で)つまり僕も俗物なんですよ」「ましてやシンガーソングライターの矜持なんかじゃない」「強いて言えば“衝動”でしょうか。作品としての歌って、本来は衝動的な叫びみたいなものじゃないですか」と応えている。〉

 

 参照:SWITCH Vol.33 No.4 Southern All Stars [我が名はサザン](2015年)、「ウィキペディア」などより。

 

「ひとり紅白」終了後、桑田の歌い手としての新たな決意表明がナレーションで流れた。

〈流行歌。ヒット曲。

 大衆はいつの世も、それを求めている…と私は思っていた。しかし、近年は何かが違う。歌は世につれ世は歌につれ、と言うが、世はあまり歌につれなくなったのだ。

 本来『大衆』とは『欲望』をあらわにし、『非常識』というものをエサにたくましく生き永らえようとする生き物であり、怪物である。

 流行歌とは、ヒット曲とは、それを証明する魂の雄たけびであり、非常識や夢物語を声に出すための道具であった。

 弱さ、醜さ、ずるさ…、それら人間の業を肯定するものが流行歌なのだとしたら、私たち大衆音楽作家は、ここ数年いったい何をやって来たのだろう?

 Act Against AIDSのテーマも、その根幹には『人間の弱さをどう乗り越えていくか』という課題があったように思う。

 AAAの活動自体は2020年に終焉を迎えるが、世の中にはその他にもさまざまな問題が山積みとなっている。

 流行歌。ヒット曲。

 大衆と程良くがっぷり四つに組み、新たな音楽を作り続けていくことを、私は辞めないだろう。 平成30年という1つの時代の節目に、私はそう思いを新たにするのだ。〉

 

 桑田(62歳)をはじめ60歳代前半のサザンが、どの様な高齢化をたどり、その面白さを醸し出していくのか楽しみである。