日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

◎日々彦詩句ノート、金子兜太 著 , 青木健 編『いま、兜太は』

◎金子兜太 著 , 青木健 編『いま、兜太は』岩波書店、2016

〇週刊『読書人ウェブ』書評(評者:青木亮人)から一部抜粋

 本書は三部構成で、第一部は「自選自解百八句」、第二部にインタビュー「わが俳句の原風景」を収め、第三部は「いま、兜太は」と題して十人の随筆を載せる。煩悩の数になぞらえた「自選自解百八句」には先に挙げた代表句もほぼ収録され、第二部インタビューでは東京を離れた経緯や一茶と山頭火の差異、、また自作「梅咲いて庭中に青鮫が来ている」を戦争体験に引きつけて再解釈するなど、彼自身が「金子兜太」を「いま」どのように捉えようとしているかがうかがえる内容で、それを引き出しえたのはインタビュアー青木健氏が金子氏と数十年来の知己であるのが大きいのだろう。

 第三部の随筆は嵐山光三郎、いとうせいこう、宇多喜代子、黒田杏子、齋藤愼爾、田中亜美、筑紫磐井、坪内稔典、蜂飼耳、堀江敏幸各氏が稿を寄せている。この執筆陣を一瞥するだけでも「いま」の金子氏が広く知られる存在たりえているのがうかがえよう。同時に、第三部には次のような一節も見える。「兜太の俳句を読もう。(略)戦争に反対する正義の俳人・兜太、あるいは、元気じるしの大俳人が出回っている」(坪内氏)。あるいは、兜太氏が注目されるのは「高齢にもかかわらず元気だというような理由からでなく、表現に向かう気概が圧倒的で、説得力をもつから」(宇多氏)。一九六〇年代から金子氏の作品の迫力を間近に感じ続けた両俳人ならではの含蓄ある一言だ。

 編集者の青木健氏と金子氏が初めて会ったのは一九七〇年。青木氏の約半世紀の積み重ねが本書を成立させたともいえるわけで、この書籍に編集者と実作者の幸福な邂逅を見るのは出版関係者であれば諾うところがあろう。俳句に関心のある読者はもとより、執筆関連の業界人にも推薦したい一書である。(週刊『読書人ウェブ』書評)

 

〇私が選んだ15句

・海に青雲生き死に言わず生きんとのみ 『金子兜太全句集』『生長』1975年

・水脈の果て炎天の墓碑を置きて去る 『少年』1955年

・朝はじまる海へ突込む鴎の死 『金子兜太句集』1961年

・彎曲し火傷し爆心地のマラソ ン『金子兜太句集』

・どれも口美し晩夏のジャズ一団 『蜿蜿』1968年

・霧の村石を投らば父母散らん 『蜿蜿』

・人体冷えて東北白い花盛り 句集『蜿蜿』

・谷に鯉もみ合う夜の歓喜かな 『暗緑地誌』1971年

・暗黒や関東平野に火事一つ 『暗緑地誌』   

・霧に白鳥白鳥に霧というべきか 『旅次抄録』1977年

・梅咲いて庭中に青鮫が来ている 『遊牧集』1981年

・おおかみに螢が一つ付いていた 『東国抄』2001年

・合歓の花君と別れてうろつくよ 『日常』2009年

・津波のあと老女生きてあり死なぬ

・被曝の人や牛や夏野をただ歩く

※参照・金子兜太 著 , 青木健 編『いま、兜太は』(岩波書店、2016)

 

〇2018年四季折々(2月4日~10日)

(4日)・春宵一刻直千金閃けり

 NHKスペシャルの『シリーズ 人体 神秘の巨大ネットワーク』第5集「“脳” すごいぞ! ひらめきと記憶の正体」をみる。

 生まれてから今迄に形成化された神経細胞のネットワークが無意識的につくられてそれが記憶になっている。それがより活性化するのは、意識的に集中しているときよりも、「空っぽ」の無意識の状態にある時に「ひらめき」が起こるという。

 私たちが意識していることは無意識に脳がすでに行ったことを、遅れて認識しているだけ。どんなことでも、脳内で無意識的に神経活動が始まって動きだし、その後追いの形で、意識・意思が働くようだ。何がきっかけで神経活動が始まるのは、その人のなかで今迄に蓄積された何かがあるのだろうが。

 

(5日)・春立つや天地の息に身を寄する

 二十四節気は日本の季節感より少し早い。立春とはいっても、まだまだ寒さが続く。そのなかでも、日の長さ、光の強さ、日暮れ時の空の明るさ、山や海の色合いなど春の兆しが遠近に感じられる。

 

(6日)・いつの間に過去のかげろひ蘇る

 金子兜太『いま、兜太は』を読む。兜太さんのことが、より親しくなる好著と思う。

「合歓の花君と別れてうろつくよ」(句集『日常』)

 みな子(妻)他界のあとは、生前の細かい言葉遣いや仕種が、何彼につけて思い出されて辛かった。どれほど自分が勝手に振る舞ってきたかと思うことも頻りに。「うろつくよ」がその後悔を抱えつつ、何ともたよりない気持ちで暮らしている自分。(自選自解108句より)

 

(7日)・春はあけぼの妻の笑顔の健やかさ

 今日は妻の70歳の誕生日。妻は、取り立てて素晴らしいところはないが、強いてあげればその屈託のない笑顔に感じることもある。総じて心身ともに健やかなのは嬉しい。

 人が生きていくとき、身近に安心感と信頼感を持てる人がいることが大事だと思っている。私にとって、妻がそうである。

 

(8日)・見回せば雪見上ぐれば春の空

 北陸の方では記録的な大雪に見舞われ、6日から8日にかけて市民生活に大混乱を起こしたと報道されていた。神戸の海側にある居宅近くでも斑雪や風花が舞っていた。

 

(9日)・願うこと只一筋に春を待つ

 大山泰弘『利他のすすめ』を読む。次のような言葉が随所に語られている。

「彼らは障害のために理解力に限界があります。これは、逆らいようのない現実です。だから、うまくいかないからといって彼らのせいにしても意味がないのです。

 その代わりに、私が工夫すればいい。------

 私はずっと、彼らが数字を理解できないことが『壁』になっていると思っていました。しかし、それは間違いでした。『壁』は私のなかにあったのです。

 このとき、私は『障害者のせいにはできない』ということを心に刻みました。そのほうが可能性は広がりますし、何より私自身が成長することができるからです。」

 

(10日)・春怒涛愛し愛され育ち合う   

 Facebookでも紹介されていた「人生を幸せにするのは何? 最も長期に渡る幸福の研究から」の13分ほどの動画を見る。とても興味深い。

 75年に渡る成人発達に関する研究。主観的に捉えがちな「幸せ」について、多くの人の協力による客観的なデーターを駆使しての研究成果で、考えたくなる提言である。

「良い人生は良い人間関係で築かれる」とし、研究結果から得られた重要な教訓は、①社会的なつながりは人にとって健康で重要、孤独は害。②友人の数や関係の有無でなく関係の「質」が大切。③よい関係は人の体を守るだけではなく、脳をも守ってくれる。などが語られる。

https://www.ted.com/talks/robert_waldinger_what_makes_a_good_life_lessons_from_the_longest_study_on_happiness?language=ja#t-16966