日々彦「ひこばえの記」

日々の出来事、人との交流や風景のなかに、自然と人生の機微を見いだせてゆけたら、と思う。※日々彦通信から一部移行。

読書ノート

◎鶴見俊輔「言葉のお守り的使用法」から

〇鶴見俊輔は自らも含めて立ち上げた雑誌『思想の科学』の活動目的は、「第一に敗戦の意味をよく考え、そこから今後も教えを受け取る」こととし、「大衆は何故、太平洋戦争へと突き進んでいったのか?」を問い始める。その理由の一つとして、「言葉による扇動…

◎手づくりの定義へ(『定義集(ちくま哲学の森 別巻)』から)

〇手づくりの定義へ 日ごろ思うこと感じることを、話したり書いたりしている。その当たり前と思っている見解について、振り返り調べて見直ししていくことも大切にしたい。 『定義集(ちくま哲学の森 別巻)』(鶴見俊輔・安野光雅・森毅・井上ひさし・池内紀…

◎過去も未来も、いまここにしかない。(柳美里著『町の形見』を読んで)

この作品をとおして、東日本大震災のような社会的影響に及ぶものから個人的なものまで、ある体験を語ることや、戯曲・小説など文芸作品として表現することについて考えた。 上演を見ていないが、巻末の解説文を参照しつつ舞台を想定しながら読んでいた。 表…

◎松村 亜里 (著)『世界に通用する子どもの育て方 』を読んで

〇本書を読んで次のことを思った。 ・「何をすると子どもがダメになるのか」ではなく、「どのような関わり方が子どもの幸せにつながるのか」という視点から、科学的に探究を重ねてきた。 ・質の良い親子関係、人間関係が子どもの健康、幸福度を高める。 ・「…

◎マルクスの自分中心的な人間観から「地動説」的な人間観への転換(内田樹『寝ながら学べる構造主義』から)②

わたしは知識としては地動説を知っているが、感覚としては,日が昇り・日が沈むといい、自然界の動きなどについてはほとんど、自己を軸にした天動説な見方をしていることが多い。これはものの見方、思考方式そのものが、少なからず天動説的な感覚を持って暮…

◎私たちは「偏見の時代」を生きている(内田樹『寝ながら学べる構造主義』から)①

〇本書のまえがきで次のように述べる。 〈知性がみずからに科すいちばん大切な仕事は、実は「答えを出すこと」ではなく、「重要な問いの下にアンダーラインを引くこと」なのです。 知的探求は(それが本質的なものであろうとするならば)、つねに「私は何を…

◎ひとりの〈ふつう〉の人として(吉本隆明についての覚書)

〇吉本隆明の「価値ある人間の原像」(改正再録) 吉本隆明に関心を持ち始めたのは、7年ほど前からである。 「老いの流儀」「老いの超え方」「幸福論」など老いの渦中にある自らの体験と実感をもとにしっかりと検証し、過去の思索に適宜言及しながら、「一人…

◎「虚構」を軸に(ユヴァル・ノア・ハラリ著『サピエンス全史』を読んで)

国家、家族制度、法律、貨幣、宗教、〇〇主義など、すべて人間が作り出した虚構(フィクション・物語)、つまり存在しないものを信じる能力・想像力によって、他の生物種には見られないほど大規模な社会的協力が可能になり、一方、大がかりな紛争や戦争に発…

◎「人間の人間たるゆえんは家族にあると考えている。」(山極寿一)

〇ダーウィンの進化理論以後、そもそも霊長類からヒトはいかにして生まれたかの根本問題に光が当たるようになり、戦後日本において霊長類学が再興されたことなどにより、様々のことが解明されてきた。 その研究成果から、700万年の間に、霊長類から人類誕…

◎共同体は一つの大家族ともいえないか(福井正之『追わずとも牛は往く』から)

〇『追わずとも牛は往く』は、著者の40年ほど前の「北海道試験場」(「北試」―ヤマギシ会)の体験をふまえ、書き進められた。記録文学である。 この作品では、「北試」の体験をもとにした物語上の村『睦みの里』での、厳しいが豊かな自然・大地の中で、追わ…

◎福井正之『追わずとも牛は往く』-労働義務のない村でー書評

〇本書は、著者の40年ほど前の1976年から2年程の「北海道試験場」(「北試」―ヤマギシ会)の体験をふまえ、書き進められた記録文学である。 読むに従って、共同体とは何か? 労働とは? 人と人との生身の人間としての心の交流とは? など、ともに考えていく…

◎自己とは何か(多田 富雄『多田富雄コレクション1』から)

※『多田富雄コレクション1、1免疫という視座―「自己」と「非自己」をめぐって』を学びほぐしながら読む。 ・「免疫とは何か」 人類は、生存を脅かす伝染病の流行に何度も曝させながらも、何万年もの歴史を生き延びてきた。それは私たちの体に、病原微生物…

◎長谷川櫂「新しい一茶」(池澤夏樹『日本文学全集』12巻)を読む

〇私が俳句をつくりはじめたのは、10年以上前に病院併設型の養護学校に関わっているときである。Kさんという年配の生徒さんが作った俳句クラブで学校の文化祭などに発表していた。生徒たちは、短い詩の形で、感じたことなどを発信できることもあり楽しんで…

◎カズオ・イシグロ『わたしを離さないで』を読んで

〇長くは生きられない若者たちの“生”を描く 『わたしを離さないで』の舞台は、へールシャムという全寮制の学校で、普通の小・中学校とは違って、生徒たちは臓器提供だけのために生まれてきた「クローン人間」である。しかもこの学校は、「クローン人間」でも…

◎健康について(イバン・イリイチ「管理された健康に抗して」から)

〇健康は,一人ひとりの人格に応じて定義され、一人ひとり違ったしかたで求められる。 固定観念は、「俺は絶対にこう思う」というのもあるが、時代や環境に影響された思い込みの場合も少なからずある。無意識に使っているので、固定観念だと思っていないこと…

◎佐々木正美先生について。(新間草海氏のブログから)

〇知人のkさんがFacebookに転載してくれる新間草海氏のブログ記事を楽しみにしている。今回のタイトルは「故・佐々木正美先生のこと」 今年の6月に、児童精神科医の佐々木正美先生は亡くなられた。 新間氏は「中心子どもの家が主催する講演会、勉強会に何…

◎再録「新間草海著『叱らないでもいいですか1』を読んで」

*昨日、新間草海氏のブログ「佐々木正美先生について」を紹介した。そのブログをもとにした著書を2年前に紹介した。此度その記事を掲載したブログを閉じることもあり、とても面白いので、ここに再録する。 〇Sくん、しあわせになりなよ! ​ 新間草海著『叱…

◎重松清『赤ヘル1975』と戦争・原爆の語り継ぎ

〇重松清『赤ヘル1975』を読む 大のカープファンで、リーグ優勝が現実のものになりはじめてからソワソワする日が続いて、優勝が決まって取りあえずホットしている。 小学生の頃、父に連れられて試合をみに後楽園、駒沢、神宮などによく行っていた。父は今の…

◎岩崎航エッセイ集『日付の大きいカレンダー』を読んで

〇生きる(生き抜く)ことへの信頼感を培う ・「僕にはもう夢も希望もないよ」(エッセイより) 茫然と無感動な日々に流されていた頃、ぽつりと母に言ったことがあります。たんなる恨み言や愚痴というよりも、ごまかしようのない命の奥底からもれた呻きだっ…

◎石川直樹『いま生きているという冒険』

〇「老い」への冒険 安曇野地球宿のスタッフK君が、2年間の体験を終えて、新たな一歩を踏み出すとのメールが送られてきて、何か応えたくなり返信のメールを送った。2度地球宿を訪問し、彼の存在の大きさを実感していて、この期間、望さんが政治に専念でき…

◎大岡昇平『俘虜記』『野火』を読んで

※『俘虜記』『野火』を読んで(1) 〇事態は動物的ですらなかった 敗戦濃厚な戦時中という異様な状況で、死と直面している人々の意識、感覚などの混乱と交流を、心理分析と戦場空間に広がる自然、風景を秀麗なレトリックで随所に織り込みながら描いたものだ…

◎「時空遍歴」を読んで(現在このHPは閉じられている)

〇リンク先のHP「ビジョンと断面」に掲載されている連載「時空遍歴」について「時空遍歴(25)」までを通して読んでみた。(現在このHPは閉じられている) 知人に紹介されて閲覧を始めたHP「ビジョンと断面」だが、最初の頃、小説以外はもう一つ馴染めな…

◎どの人にも無限の可能性がある(乙武洋匡氏から)

〇乙武洋匡氏に触れて 精神障害者や重度心身障害者などの介護ヘルパーや精神保健ボランティアグループなどで活動していたとき、当事者の親御さんと、打ち合わせ、検討会、懇談会などで一緒に考えたり、行動を共にしたりした。 当事者は様々な困難を抱えてい…

◎レイチェル・カーソン著『センス・オブ・ワンダー』から

○一歳余の幼児を育てている東京の知人から、ときどき農業や畜産などの自然環境を感じられるところに、子どもを連れていきたい。そのような場として岡部実顕地を一度訪ねてみたいとの連絡があり、岡部の知人に繫げた。昨年何度かその子と接していて、その成長…

◎食といのち (福岡伸一『生命と食』から)

○福岡伸一『生命と食』(岩波ブックレット、2008年)などを参考にしながら、「いのちと食べる」について考えてみる。 人は他の生物をいただくことで生きていける。生きるというのは食べ続けることであり、食わなければ生きられないという、人が生きるという…